134 / 164

第十九章 僕、発情したみたいですぅ。

 2月14日、バレンタインデー。  杏は、かねてから真に話していた通り、昼食を外で食べる、と言ってマンションを出て行った。  真はそっと後をつけ、エントランスから杏を見ていた。 「タクシーで行きなさい、って言ったのに」  杏は、迷うことなく駅の方へと歩いて行った。  そこへ、携帯の着信音が。  詩央からだ。 『もしもし、北條さんですか? 杏くん、家を出ましたか?』 「ああ。今、出て行ったよ」 『了解です。じゃあ、僕たちも準備しましょう』 「では、見つからないように」  真はいったん部屋へ戻り、スーツを身に着けた。  自動車を走らせ、月雁の入っているホテルへと向かう。  少し早めに到着したが、詩央はすでにロビーで待っていた。

ともだちにシェアしよう!