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第十九章・3

 その後、杏は純粋に食事を楽しんでいる風だった。  三村への言葉も、盛り付けや味わいなどの、料理に関することばかりだ。 『この潮汁、すごく美味しいです。出汁は、何でしょう?』 『うん? 味噌じゃないの?』 『昆布かなぁ? 鰹節かなぁ?』 『味噌汁なんだから、味噌だろう?』  こんな漫才のような掛け合いに、真はくすくす笑っていた。 「三村さん、全く当てが外れたようだな」 「北條さん、これで杏くんの潔白は証明できましたか?」  ああ、と真は深くうなずいた。 (本当に、杏は一生懸命に料理を研究していて)  そしてそれは、全て私を喜ばせるためだという。 「杏くんを、叱らないでくれますね?」 「もちろんだ」  ところが、このあたりから雰囲気が怪しくなり始めた。

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