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第十九章・6
「美味しいお料理、食べそこないましたね。三村さん」
「詩央くんまで、そんなことを言う」
正直、と詩央は腰に手を当てて三村をにらんだ。
「何をしようとしてたんです? 北條さんには黙っててあげるから、白状してください」
「うん、まあ。媚薬でね、杏くんを……」
そこまで喋った途端、三村は詩央に頬を平手でぶたれた。
「な、何をする!?」
「最低。人の恋人を、媚薬でものにしようなんて!」
「すまなかったよ。反省してるよ」
この部屋に乗り込んで来た時の、真の真剣なまなざし。
三村は、それを見て心を打たれていた。
「いいね。あんな風に、一人の人を心から愛せるってことは」
しゅん、としおれてしまった三村に、詩央は手を差し伸べた。
「仕方がないですね。じゃあ、行きましょうか」
「行くって、どこへ?」
「デート、してあげます。今日は、バレンタインデーですからね」
独りぼっち同士、仲良くしましょう。
「詩央くん、ありがとう」
三村の濁った目に、光がさした瞬間だった。
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