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第十九章・7

「杏、しっかりしなさい!」 「んんぅ。真さぁん……」  雁月の入っているホテルの一室に、真と杏はいた。  ところが真が杏をベッドに横たえた途端に、彼は服をはだけだしたのだ。 「ね、お願いです。真さん、僕、欲しい……」 「君は三村さんのせいで、今少し状態がおかしいんだ」  正気でない杏を、抱きたくはない。 (後で思い出して、この子が気まずい思いをしてはいけないからな)  真はそう考え、必死で杏を寝かしつけようとするが、全く言うことを聞かないのだ。  乱れた服装の杏は、真の大きな手を抱きしめ、その指をしゃぶり始めた。 「んぁ。ね、真さん。僕、発情したみたいですぅ」 「何だって」  そう言われれば、Ωフェロモンの気配がする。 「大丈夫か、杏。おい、しっかりしろ」 「真さんがしてくれないなら、僕、僕……」  杏は、すっかりはだけてしまった両脚を擦り付け合って、その中心に手を伸ばした。 「おい、はしたないぞ。やめなさい」 「だったら、真さんが……」  仕方がないな、と真はスーツのジャケットを脱いだ。  慌ただしくベルトを外し、下服を緩めた。  甘い息を吐く杏に、覆いかぶさって行った。

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