150 / 164
第二十一章・2
真さんが、キャンドルを辞める。
でも、そしたら……。
「詩央さんや、他のスタッフさんは、そのことを知ってるんですか?」
「うん。詩央くんに、ちょっと言ってみた。そうしたら」
そうしたら。
『北條さんがキャンドルを辞めるなら、僕も辞めます!』
「こんな言葉が、返ってきてね」
他のスタッフも同じ意見だ、と鼻息の荒い詩央だ。
「私が辞めれば、遠田の息のかかった人間が次期店長に収まるだろう」
そうすれば、また彼がわがまま放題にキャンドルに通うことになる。
「それを気にして、決心がつかなかったんだけどね」
「でも、真さん。どうして急に、お店を辞めるだなんて」
「それは、今後の人生設計のためなんだ」
そこで真は、杏の肩を抱いた。
「杏と結婚するんだ。もう半グレはやめて、堅気になりたいんだよ」
「真さん……」
それは嬉しいことだけど。
でも、詩央さんたちは犠牲にしたくない。
そんな杏の、思いだった。
ともだちにシェアしよう!