160 / 164
第二十二章・5
3月14日、ホワイトデー。
この日、真は杏を連れて外出した。
「また、豪華なホテルでお食事ですか?」
「着いてからの、お楽しみだ」
車を走らせ、繁華街に向かう。
商用地にしては広いスペースの駐車場に、真の車は滑り込んだ。
「さ、着いたぞ。降りて降りて」
ワクワクしたような真の声色だ。
杏も笑顔で、急いで車外に出た。
そこには、一軒のレストランが建っていた。
店名の看板には『パインサラダ』とある。
まだ『準備中』との札が下がっていたが、真は気にせずドアを開けた。
「真さん、営業時間外ですよ?」
「杏。君がここに入って、仕上がる。準備が整うんだ」
一体、真さんは何を……?
杏は、恐る恐る敷居をまたいだ。
「いらっしゃい!」
「あれ!? おじいちゃん先生!?」
そこには、杏の通う料理教室の講師が立って笑っていた。
ともだちにシェアしよう!