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第二十二章・7

「いつも、私のために腕を振るってくれてありがとう。でもな、杏。今度はその腕を、自分のために使ってみないか?」 「自分のために、ですか」  そうだ、と真はうなずいた。  これだけの料理の腕があれば、社会的にも認められる。  お金も稼げるし、名誉だって手に入る。 「杏は、強くなれる。みんなが、君を認めてくれるんだよ」 「何だか、夢みたいです……」  あまりのサプライズに、ぽうっとしている杏だ。  だが、はっきりと自分の考えだけは述べた。  絶対に譲れない、信念だけは伝えた。 「でも、僕が一番お料理を作ってあげたいのは、真さんですからね」 「杏、君は」 「レストランで働いても、真さんの御飯作るのは、やめませんから!」 「ありがとう、杏」  よし、と真は晴れやかな声を上げた。 「まずは、メニューの検討からいこうか!」 「待ってください、真さん。このレストラン、和食ですか、洋食ですか?」  それには、おじいちゃん先生が頼もしく杏の肩を叩いた。 「和洋中、何でも出そうじゃないか。皆の好きなものが食べられる、そんな店にしよう」 「ありがとうございます!」  慌ただしく動き始めたスタッフの中で、真は杏の手を強く握った。

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