163 / 164

第二十二章・8

「喜んでくれたかな、杏」 「はい、真さん」  手を取り合い、二人は互いの熱を感じていた。  新しい風を、感じていた。 「このレストランで、6月に披露宴をしたいと思っているんだ」 「披露宴、ですか?」  イヤだな、と真は頭を搔いた。 「君と私との、結婚披露宴、だよ?」 「え!? あ、その!? はい……」 「式は、4月に。暖かくなってから」 「はい……」 「花いっぱいの、いい場所を見つけたんだ。気に入ってくれるといいが」 「真さん!」  杏は、もう周囲も構わず真に抱きついていた。 「真さん。真さん、愛してます。愛してます、真さん!」  真は驚いたが、その腕を、声を振りほどきはしなかった。  ただ受け止め、応じた。 「杏。愛してるよ、誰よりも」  周囲からは拍手が起こり、二人を祝福した。 「君はもう、家政夫じゃない。私の大切な、パートナーだ」 「はい……、はい!」  まだ少し寒い、3月14日。  ホワイトデーに、杏の新しい未来の道が開けた。  そしてそれは、真と共に進む生涯の道へと続いていた。

ともだちにシェアしよう!