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彼との別れ

セフレからただの他人に。 そうなってしまえば、もう繋がりなんてどこにもない。 ケンタは相変わらず僕に気を使ってくれる。ただ、その優しさを返すことは出来ない。 だから、全てを捨てることにした。一人暮らしの部屋を解約した。 僕に無関心の父は部屋を解約したいと言えば、違約金と次の家の契約金を無言で渡してきた。 別に金持ちと言えるほどでもないけど、ある程度の金を持つ父は僕にもう一つの家庭を壊されたくないから金を渡してくる。 それだけ。 でも、今回ばかりは感謝している。 荷物をまとめながらそう思った。 思い出の品々がどんどんゴミ袋に入っていく。彼が使ったコップも彼のために置いていたタオルや日用品も全部。 ただ、彼との思い出を全てを捨てるには、あまりに捨てるものが多かった。 携帯のファイルからも彼の写真を捨て、残ったのはケンタが馬鹿みたいに自撮りした写真だけになった。 ケンタはいつも僕に寄り添ってくれる。 辛くなった時励ましてくれる。 まさか、こんなところにも現れるとは思わなかったけど。 部屋が空っぽになっていく。 どんどん、どんどん無くなっていく。 そして、最後に残ったのは彼が唯一僕にくれたウサギのぬいぐるみだった。引き裂くことも、ゴミに入れることも、ましてや売ることも出来ない。 ただポツリとあるウサギのぬいぐるみは置いていくことにした。きっと迷惑な住民だ。ウサギのぬいぐるみだけ置いて行くなんて。 でも、僕がこのぬいぐるみに何かをする事は出来ない。出来てぬいぐるみを置いて行くくらいだ。 「ごめんね、意気地なしで。」 このウサギのぬいぐるみに、僕の残った全ての記憶を押し付けて、出ていこう。 さよなら、トオル君 大好きだった 愛していた さよならーーー

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