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第8話 悪魔の面貌

校舎を出る時に、遠くに人影が見えた。 相上。 相上が、中庭の噴水のあたりに、何かを見つめ、顎に手をやりながら佇んでいる。 (………………?) 気になるが、通り過ぎた。 理事長の部屋のある敷地内の邸宅へと、教師に教えられた道順通りに足を薦めている。 学校の敷地内は一つの森だ。 初めて通る理事長の邸宅までの道のルートは、なんだかとても迷いそうな感覚がした。 暗くなれば帰り道迷子になるかもしれない。 それくらい、舗装され開けた道とは程遠かった。 少々、草木を踏みつけ、雑草が横たわっている一筋が、皆が通る歩き道なんだとわかるくらいだ。 落葉知らずの、緑色した並ぶ針葉樹。 茸の笠のように枝を大きく広げる広葉樹。 色は木によってまばらと変わりつつある兆しを見せ、いずれは落ち葉がはらはらふり落ちる筈だ。 俺は雑木林を歩きながら、様々な考えが頭を去来した。 この学園は、初めて来た時から異様だった。 下界と全く連絡手段を断たれたのも 異様だし、こんな学園が存在できていることも異様だ。 学園中で生徒達がセックスをしているのに、教師の誰もが見て見ぬふり。 あろうことか、宍戸の集会にも参加している。 もしかしたら、教師は皆宍戸の傘下なのかもしれない。 葭葉の授業……あの蓄音機の呪文、あれも宍戸が命じて教師達にやらせているのか? とすると、矢本や葭葉達を殺したのは…………。 落ちた小枝を自らの足で踏みつける音で、俺は迷宮の様な思考から現実世界へと意識が呼び戻った。 ………ん? 草むらの中に胸像があった。 何でこんなところに……? 近寄ってみた。 「うわ!!?!」 胸像はよく見れば、その顔は鬼のような顔をしている。 いや……悪魔だ…………。 象の様に牙が生え、目は恐ろしく大きく、角は斜めに向かって尖っている。 長い草に覆われた銅像の台座を手で探ってみると 『ダリオ・アイブリンガーの像』 とタイトルが隠されていたのが読めた。 どういうことだ? ダリオ・アイブリンガーと言えば、この学園の創設者の名前だ。 それを、こんな悪魔そのものの顔にして胸像を作り、敷地内に建てるなんて……するか? 一体誰が作ったんだ?わけがわからない。 ………!牙の生え開いた大きな口の中に、黒い何かある。 手を突っ込み触ってみると、窪み。 窪みだった。 平たい何かが嵌っていたような窪み。 ちょうど手のひら分の大きさ。 まるで何かの丸く平たい円盤状のものがはまっていたような…………? ふと、いつかの夢に出てきた、相上が口に咥えていたメダルの映像が頭に浮かんだ。 ダリオ・アイブリンガーの像の悪魔の顔は、ある方向に向かって睨んでいた。 その方向に顔を向けると、灰色の石造りの、まるで塔のような三階建てくらいの建物があった。 学校の敷地内の一番奥に構えてある別館らしきもの、理事長の私邸だ。 1 通された理事長ルーム。 校舎と比べて大きくはないが、まるで塔のように、灰色の石作りで幅が無く縦に長かった。 まるでフランス貴族が幽閉されていた塔のようなデザインだ。 エレベーターは凝った模様の柵に覆われ、ガシャーンと柵が上下に開いて乗り込めた。 そこのエレベーターで上がった一番上の部屋が、理事長の執務室だった。 「東京にも自分の自宅はあるのだが、何しろこんな立地の悪さに行き来する気などとうに無くしてね。ハハ、この館はまるまる私の私邸として使用している。仕事部屋だけじゃないよ、住んでいるんだ」 初めて対面する理事長の#幹 暦彦__かん つぐひこ__#は、デスクの上に手を組み合わせた上に顎を乗せ、社交的な笑顔を見せた。 40歳くらいに見えるが、なかなかオシャレだ。 ネクタイやスーツ、腕時計、小物の全てが外国製に見える。 「どうぞ。紅茶が冷めない内に」 出された紅茶がテーブルにある。 スティックの砂糖が添えられているが、砂糖は使わずに一気に飲み干した。 心音の動揺が苦しかったからだ。 「生徒のみならず……」 理事長が目を伏せた。 「ところで、沼間道也君、といったね。甥彦と同じクラスの。沼間君は三年生の相上君とどういう関係なの?」 相上について急に聞かれた。 「関係?寮の寮長です。寮で会う以外はあんまり話したりしません」 理事長は怪訝に問い返す。 「おやぁ…?俺はてっきり……」 その時だ。視界がグラリと貧血の時のように揺れた。 座っていたソファから転がり落ちる。 「効きが早くて結構」 理事長の笑う顔が、重たくなる瞼の隅に浮かんだ。 気がつくと、柔らかい感触のスベスベのシーツの上に、俺はいつまでも目を閉じているような暗闇の中いた。 目隠しをされていると気付いたし、口元がおかしい。 何かを咥えている。 球状の…………。 腕も変だ。背後に両腕を固められたままガムテープで縛られてるように、固く動かせない。 扉が開く音がした。 「ここは俺の普段の自室。おおっと、ポールギャグの位置が」 理事長は手を添えて俺の口の丸いもののズレを位置修正した。 「やぁ、やぁ、沼間君、とっても素敵。似合っている」 理事長の暦彦から、ポールギャグと目隠し、後ろ手に腕を拘束された俺は、聴覚しか自由になる器官が残されていなかった。 そのまま衣服を脱ぐ音がし、ベッドに横たわるらしき暦彦の上に見えないまま誘導され、またがらせられ、おそらく暦彦の雄の上に乗らされてから腰を下ろさせられた。 おかげでズブズブとあっけなく、立派な雄は俺の中へとめりこみ、渦の中心のように飲み込まれ、脊髄から脳へと 暦彦の#雄の形__・__#が、遺憾無く届けられた。 「甥彦も、小さい頃から、これをされるのがとても、とても好きでね……」 残忍に喉の奥に含んだ笑いを立てながら、開脚させられている俺の足を掴み俺に入れた物を動かす。 「あの子は毎日お尻を衝かれながら、あそこまで立派にスクスクと成長したんだ……」 俺の睾丸を掴み、サワサワと揺さぶりながら、酔う様な抑揚の言葉を続けた。 「その格好……実道君を思い出す……」 実道……。実道! 突如として呼ばれた、理事長の口からの実道の名前。 実道が、どうしたって? 「実道君とまったく同じ格好をして、まったく同じように俺に揺らされている……。実道君も、初めは嫌がっていたが、最後には自分から俺を舐めまわし、俺に跨るように変わっていった……」 身体が震える。 驚愕や怒りや、悲しみに襲われ。 理事長……、理事長が、従兄弟を行方不明にしたのか? 今もどこかに……彼を隠しているのか?それとも、それとも……。 「入学してきた当初から、一目惚れだった…………。歩く実道君の凛々しい、毅然とした姿に、刺激を覚え、愛情を覚え、心がうきうきと、浮き足立ち、かってないほど、この胸は痺れ奮い立たせられた。 紅茶を飲ませ、実道君をこの部屋で、すぐ俺の思うままに…………したよ」 残酷な返答だ。 「半年は丸々かけて、実道君を#作り変えて__・__#いった……」 理事長は俺の胸板に手を伸ばし、二つの蕾を繰りながら呟いた。 まるで実道を作り替えた当時を、懐かしんでいるかのように。 突然の刺激に、意識を集中させ思考をしたい、俺の意思に反して体は仰反る。 蕾をいじられただけでピクピクと足は攣り、背は痙攣するよう、感度が様変わりしてしまったからだ。 「そう、締めないで……。 実道君がどこいったか、知りたいか……。 知りたいのか……。 いつか、教えてやる……。 それまでこの部屋で、ずっと俺に……ね?」 蕾をつままれる度に反射的に体をそらす俺を、手をやり自分に近づけさせる。 ギャグを嵌めた口を、ギャグの上から舐め、溢れっぱなしの涎を、音をならして彼は啜る。 「不思議だが……道也君、君にも実道君を見た時と、同様の、不思議な不思議な高揚感がある。胸の奥から際限ないきらめきが湧く。これは多分、俺は君を……」 2 足の間には電動するバイブが太く、俺に苦悶を与えている。視界も言葉も封印されたまま、闇に呑まれている。腕を後ろに縛られたまま、足も縛られてベッドに固定されている。 理事長の手が胸元を触っている。 何か、冷たい綿らしきものが乳首に当てられた。 脱脂綿か。 消毒液くささがツンとする。 乳首を撫でるように濡られ、円の乳輪も撫で擦られているのがわかる。 「消毒だけでもう……いじらしく何をされるかを待って勃ってる」 理事長が嬉しそうに笑う。 ふいにツンツンと乳首に先端の細すぎる尖りが突き刺さる。 恐怖を覚えた。 「道也。こいつはイイ思いをさせる注射針だ…………」 震えた。注射……注射針……。次にすることがわかったからだ。 理事長は右の乳首を摘んで指で押さえて固定し、真横に鋭い針を当てる。 「道也の乳首の処女も犯してあげる」 ブツッ ギャグ越しに悲鳴がただの醜い呻めき声となってずっと喉から出続けた。 敏感にも程がある、最たる場所を、惨くも針で横に貫通させられ、血が流れている感触がする。 痛い、超、いたい。 「まだまだ足りない。いっぱい、犯してあげる」 そういって更に注射針を下から当て、また貫通、出せない叫びをあげ仰反る俺に、更に逆側の横から「まだ犯すよ」位置をずらして再度貫通させられベッドから転倒しそうな程暴れ仰反る、「まだ欲しいね?」上からブツリと再度下まで貫き「ーーーッ!!!」唾も汗も鼻水も飛び出る。 そして極めつけは乳首の真正面から「ほら、とどめ」注射張りをブツッと刺された。 10分にも満たない誰も助けてくれない激痛地獄。終わると頭を大事にいいこいいこされる。 計5本の注射針に俺の小さな乳首は犯された。 左の乳首も全く同じように注射針を貫きまくると、左右対称にさせ、針を両方に貫通させたまま、バイブを抜かれ、理事長自身が入ってきた。 胸が熱く痛いまま、下半身からは快楽で揺らされる。 同時に果てた時には既に血は止まっていて、針を抜かれ脱脂綿で血を綺麗に拭き取られ、空いた一つの穴にそれぞれリングピアスを嵌められ、さらに釣り針のように引っかけひっぱる糸が、両方のリングピアスにかけられた。 それは天井に引っかけられ、ずっと俺の乳首を前に引っ張られ続ける苦痛を与えるものだった。 乳首を引っ張られたまま、また脚の間に理事長自身が嵌め込まれ、乳首は痛く、足元は甘く、犯される。 体が変わっていく…………。 「そろそろギャグをとろうか」 理事長の腕が轡に触れ、急に口が解放され顎が楽になったが、俺の口からは言葉になるものは出なかった。 「…う…ふぁっあ……あ゛あ……あ゛……ふああう…あ゛っ」 「あはは。どうやら感じまくっているね……」 「ん゛んんンンッ!!ん゛ん゛ん゛ッ」 「道也、自分から腰を動かして上下してみなさい」 後ろ手に縛られ乳首は釣られたまま、足首は固定されているのに、腰だけを動かして、理事長の雄を体の中に出し入れさせた。動かす度に蕾が刺激される。 理事長はとても悦び、俺を手に入れたと感激していた。 3 水流が勢いよく壁に跳ね当たる音がする。 はっと意識が立ち上がると俺は我が身の状態を確かめた。 相変わらず後ろ手に縛られ、足首はベッドに鎖で固定されているが、目隠しと靴轡は取られ、視界が自由になっていた。 体は綺麗に隅々まで拭かれているような感覚がした。 薄暗闇の室内の中シャワー音がする。 この理事長の部屋と隣接されたバスルームに、恐らく理事長が入っているのだ。 案の定暫くして、ガラッと腰巻きタオル姿の理事長が、タオルで頭を拭きながら光の差し込みと共にバスルームから出てきた。 俺が起きているのを見て、満足げに笑うと、腰巻きを取り外し、全て裸になる。 机の上の箱から何かを取り出し俺の元まで来ると、取り出したものを見せつけた。 透明の、シリコン製の、男性器を象った、でも人間のより遥かに直径の太く、遥かに長い巨大な何かだとしかわからない。 「馬のサイズと同じにするペニスサックだよ。これを俺のこれに被せ、道也を貫く」 「ひっ………ィ!!!」 「馬になって、道也を愛してあげるからね」 誰も望んでないものを、恍惚と語り、自分のそれに、まがまがしい被せ物を被せた。 人間の腕の肘から下より長く、太さは同じくらいある。 見る間に増大したそれに、潤滑オイルの口を開け、惜しまずビチャビチャ濡らしていく。 俺の後ろ穴にもオイルの口を直接突っ込み、中に飲ませていく。 気持ち悪い感覚がした。 そうだ、と思いついたように、何も責められておらず自由になっていた乳首に、先の注射針で真ん中に穴開けられた乳頭目掛けて、画鋲のような形をしたピアスの針を差し込んできた。 「ん゛ッ」 もう片方にも差し込む。 「ん゛あ!」 差し込まれた針の箇所からビクビクまた熱くじんわり痺れ、胸先の神経がこれ以上無いくらい活性化し、触られず動かされずとも、背筋まで疼痛のような快感を運んでいく。 蕾に気を取られている間に、後ろ穴には凶悪なまがまがしい異形のシンボルが照準を合わされていた。 ズッ 「ンアッ   アア゛ア゛ア゛アあ!!!ーーーーーッッッッ!!!」 目が剥かれ、グルンと知らぬ風景を見る。 人間の体にねじこまれる、異生物の有り得ない質量の太さ、どこまでも入り込む長さ、壊れそうな恐怖。 人生の中で、絶対味わうことなどなかっただろう、異常な体感。 未知の生物に臓器を犯されているような苦しさ! 胃まで突かれているような、吐き気! 胸は熱く、下は、人間の形をしただけの化け物に異形の性器で貫かれている哀れな自分の姿の光景が、まるで客観的に脳裏に浮かんだ! ギチギチメリメリと限界まで拡げられ、埋められて、奥の奥まで届いている。 それでも耳を打つ接合のいやらしい音は同じ、変わらずセックスの音だった。 ……バッチョンバッチョン……バッチョンバッチョン…… 「こ゛われるか゛らッ……りじっち゛ょっ…おれのか゛らだがっ……こ゛わ゛!!れるがら……」 「壊したいんだよ」 ……バッチョンバッチョン……バッチョンバッチョン…… 「………ど、どーし…て゛ぇ……?」 涎が流っぱなしの口で、呼吸もまともに出来ずに、白くなった頭で、それだけが疑問に浮かぶ。 「俺を……好きなら……普通に……やればァ゛ッ…… ァ゛…いいだけ……だ……ろ…オ゛……ぅっ……なんで…………わざわざ………ッヅア゛ア゛!!!」 「道也の全部を手に入れたいからバラバラに壊すんだ」 笑っている。 「バラバラに砕いて、再生させて、 俺の腕の中に真の道也を新しく甦らせる」 これまでで最高の一突きが来た。 目の前に火花が散って、精液は溢れ飛び、頭には何も浮かばず、完全に真っ白になった。 … 「……やぁ、君か …しっ 道也がまだ寝ている 可愛い寝顔だろう?美しい裸体だろう? ただのどこにでもいる少年にしか見えないって? ……俺にはそう見えるんだがねえ 内側から光が輝いて見える…… んん…… 何か言いたげだな…… 怒りを蓄えた目をして…… グッ! おま……え……!! 待て、やめろ…… お……い…… み……ち……や……… 」 何か大きな物音がした気がした。誰か倒れるような。 それでも俺は、意識を立ち上がらせることが出来ずに、また深く沈み込む……… 「んん……」 気がつくと理事長の部屋だった。 起きると、足が、手が、自由になっていた。 ほどかれている。 気絶した時は確か縛られてたままだった筈だ。 胸のピアスも取られてスッキリしていた。 目線を横に向けると、心臓が飛び跳ね、喉から悲鳴が出た。 口がワナワナと震える。 「し、死んでいる!」 理事長がバラバラになって死んでいた。 血の水たまりが。 床に広がって。 千切れた手足が、首が、胴体が、血だまりの中鍋の具のように散逸となり浮かんでいた。

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