13 / 24
アナザーエンド 葵生川
「明日も今日と同じ時間に保健室に来るんだよ……」
あの時囁く葵生川の命じる言葉通りに、いや、時間よりかなり早く、一日中そればかり頭にまとわりつき心待ちにしていたかのように、焦りながらソワソワと、保健室の扉の前まで来てしまった。
押し殺したい変な期待が、俺の体には俺の意思に反して、ジワリと侵食するように既に生まれていた。
それともこの学校の底知れない闇の恐怖が、自分の中でも誤魔化しきれないまでに膨らみきっていて、今にも腫れた心臓がはち切れそうなほどで、それを葵生川が与える刹那的な快楽の中に紛らわし、心を逃がそうとしているのかもしれない。
唾を飲み込み、保健室の扉を開けようとしている。
音を立てレールを引き扉が滑った。
葵生川が生徒の腕に包帯を巻いている最中だった。
葵生川がちょっと口を開いて「………」とこっちを見ている。
「あ……っ!あ……っ!すいません……!」
「さ、もういいよ。授業にお戻り」
「ありがとうございます……葵生川先生……!」
包帯を綺麗に巻き留められた見知らぬ男子生徒は、頬をポッと染め、恥ずかしげに保健室を去って行った。
「早いな」
葵生川はこちらに向き直ると少しだけ言葉を尖らせそう告げた。
・
・
・
・
葵生川は道也の体を保健室のベッドに寝かせ、道也の雄の猛りを、手で掴み口に含んでフェラチオをしていた。
「…………ンッ……!ハァッ!!………」
それだけではない。雄の真下にあるワセリンクリームを塗りつけた後穴に、指をズッポズッポと差し込みながら掻き回していた。
「…………せんせえ!!」
道也が苦悶にも似た表情で、堪えきれない快楽の声をあげる。
突き刺し込んで、ドリルの様にクルックル手の甲ごと回しながら、猛りをピチャピチャと舐める。
「どうだい?君は知らなかったろう?こんな快楽があることを。この体は」
道也の雄の亀頭、カリ周りを、美味しそうに丹念に舐める。
中指と人差し指の二本指がグルグルと動く。
笠は舐め甲斐があり、どれだけしゃぶりついても、ビクンビクンと可愛らしい反応を見せ、激しくアナルを責めながら強く吸い込むと殊更道也は腰が飛び上った様な反応をする。
この男性教諭は、昔から自分より年下の男に性の手解きをして、扉を開けていない未知の快楽へと導いてやることが好きだった。
自らもこの安倉野学園男子校の生徒であった時から、後輩の少年の秘穴をいじり回しながら雄を口内に含んで舐めまわし、見知らぬ絶頂を教えてやるのを何遍もした。
保健医になってからも、数え切れぬ男子生徒に、雄を舐められながら後穴をいじくりまわされる悦びと、後穴を雄に貫かれる悦びを教えていた。
そういえば宍戸晴樹、という男子生徒に誘いをかけ後穴を貪ろうとした時、彼は後穴に教師の雄を貪りながらも、まるでこちらが喰われるぐらいの不敵な性行為となったものだ。
「一回出しておくか?」
思い切りブスッとあるポイントを一番長い中指で突き刺し、グリグリ押してきた。
「ふァッ─────!!」
押し出された寒天の様に、精液が溢れ、たゆまず出る。
葵生川はそれを、先端を口につけ、一滴も逃さないようズルズルと吸った。
「ァッアーッ!!」
吸い出される衝撃に、道也は快楽の呻き声をあげた。
出してる間中も、指は後穴をグリグリと回し、突いては、ズポッズポッと刺激を与え続け、道也を弱らせた。
「沼間君……好きだよ…………」
指は道也の中を擦り続け、精液を出し切らせた。
教師はグッタリ静かになる道也の足を開かせ、欲望に光る瞳の色を隠さず、自らの鎌首をもたげた凶暴な雄を、柔らかくなった後穴へと押し進めた…………。
保健室の窓の外からは、部活動に励む生徒達の、運動の声が聞こえる。
ある日道也はある器具を自身の雄に装着させられて、背後から葵生川に挿入され突き動かされていた。
尿道ブジーと、亀頭から軸の全身からを覆い揺れて刺激するバイブ一体型の玩具。
尿道に入る針の様に細長い器具もちゃんとバイブとして機能し、震えて尿道を掻き回し拡張していく器具だ。
亀頭部と軸部はそれぞれ個別の動き方をし、尿道ブジーの動き方はまるで、尿道を入っては抜け入っては抜けと、尿道ピストンされているような錯覚を起こさせる。
何とも言えない違和感と不快感に、道也は取り外してくれと葵生川に懇願したが、葵生川は笑うだけで取り外さず後ろから突きまくる。
立った葵生川に両足を大きく持ち上げられ、内も外も律動される。
何時間ずっとその状態か。
既に葵生川は、人には射精止めを強いておきながら、2回道也の中でイッている。
「はっ!!あっ!!……あぅっ!!……んんおっ!!ぁあっ!!」
「沼間君の男アナルは、相変わらず、雄を歓ばしてくれる」
尻をギュッと握り掴んで揉む。
「この臀筋、最高だよ」
「ンっあアアッ!!」
挿れながら首筋に顔を寄せて囁くように話しかけている。
「私は筋金入りの同性愛者なんだ……沼間君みたいなハツラツとした男の子の中でないとイけないんだよ………」
「ハァッハァアッ!!!」
道也の中で不快感よりバイブ全体の雄自身を刺激する快楽のほうが上回ってきた。
尿道の違和感は既に麻痺し、口の端から涎を垂らすほど甘く変化している。
「取ってせんせぇ!!もうこれ取って!!」
「駄目だ」
「イけない……!これじゃイけないよぉ………!」
「沼間君……いいかい?君のような健康な男の身体はね、後ろのアナルをガンガンに突かれただけで、精子を出さずとも雄オーガズムに達することが出来るんだよ。君は何回も今迄雄オーガズムに達しているけど、自分で気付いてなかったのかい?」
道也は自覚していなかったが、これまでの繰り返す葵生川とのSEXの内に、何回も射精せずに達していたらしい。
「こんなのされたらブッ壊れて、二度と出なくなっちゃうよぉッ!!」
葵生川はおかしげに笑って
「そうなったらそうなったで、雄オーガズムだけを味わって生きていけばいいだろう!」
葵生川は思い切り激しく、道也の体を揺らして突いた。
「ア゛!!ア゛!!ア゛!!ア゛!!」
声が揺れてブレる。
尿道を犯されながら、後穴を本物に犯される。
自分の雄自身も狂おしく刺激されて悶える。
ガンッ!!
ガンッ!!
ガンッ!!
「あっ!!だめ……だぁ…っ!?深い!!来るっ……!!来ちゃう………っ!!!」
「そうだ!それが雄オーガズムだ!!雄が自分より強い雄に組み敷かれて生殖相手にされた時に発生する生理現象だ!!」
「ウアあ゛っ!!?せんせぇーっ!せんせえ!!助けてえっ!」
「イけ!!道也!!たっぷり泣いてイけ!!」
ガンガンガン!!!!
「ンッ!!!………────ッ!!!」
道也はフルフルと震え、脳髄だけで快楽の最頂に達した。
終わり、荒く息つく道也は倒れ込む。
葵生川は足を開かせ
ブジーをゆっくり引き抜くと、道也の身体がブルッと震え、先端の最細が、引き抜ききった瞬間、ピュッと白い精液が弾ける様に出た。
葵生川はすかさずそばに準備していた採精カップをあて、精液を逃さず受け止める。
「沼間君、これが沼間君のニ時間ずっと射精を我慢しながら突かれ続けている内に、快楽成分が濃厚に溜まった君の精液だよ」
脱力する道也の身体を片手で抱き寄せ、口にカップをあて、飲ませようとする。
唇にあてられなまぐさい精が臭い漂うそれに当然抵抗感が真っ先に浮かぶも
自分を熱心に見つめる葵生川の眼差しに強いられて
そろそろと道也は黙ってそれを飲み下すが、堪らない味にむせて一回外に吐き出してしまう。
「自分のだろう、ちゃんと飲みなさい」
と葵生川は自分の口にカップをあて、道也の精液をズルりと口に含み、道也の唇に覆い被さると口移しをして、道也自身の精液を流し込んだ。
道也がぼやんとした眼で生臭い精子の口移しを受け、彼が飲み込むのを視認すると、またカップを彼の口元に当てた。
「……んっ……んっ……」
白くどろどろとした液が喉を滑り落ちる。
葵生川は道也の喉が動くのを愉快そうに見つめた。
「ふふふ……」
腕を組みながら窓際に立ち、生徒の去りゆく姿を見送ると
葵生川は手に持つカップの底に残った精液をゴクッと飲んだ。
それから特に魔神も復活せず、猟奇的な殺人事件も起こらず、変わったことと言えば、宍戸と相上と友人の甥彦が同時期一辺に行方をくらませたことぐらいで、相変わらず従兄弟が失踪したまま、季節が移り変わっていった……。
三年生の最後の冬。春の前。
「葵生川先生!俺……俺、もうすぐ卒業するんだ……」
「おめでとう、沼間君、君のおかげで先生も毎日笑顔で過ごすことが出来たよ」
「先生!あの、学園を卒業してもまた会えるよね?」
葵生川は急に沈黙する。
「…………」
「先生?」
「卒業おめでとう、沼間君、君は私の可愛い生徒の中の一人だ」
「なんだよそれっ…………」
「羽根を付けてはばいていくからこそ、純粋な君達の姿はとても美しく、私の目には眩しく映るんだ。はばたいていきなさい、沼間君」
「ふざけるなよっ!猥褻教師!!」
道也は鞄を思い切り葵生川にブン投げた。
「好きっていうのも!好きっていうのもやっぱり……!嘘だったんだな!」
葵生川は投げられた鞄を手に掴み、前髪を振りながら平然とした顔を道也に向けた。その顔が答えだった。
「糞野郎っ!!お前なんか嫌いだーっ!!!」
道也は泣きながら怒鳴り保健室を走り去った。
(心にも無い好きを繰り返しながら、あんなに……あんな……あんなメチャクチャに………俺をやりやがってー!)
自分は葵生川のあんなアブノーマルな性の趣味のはけ口に利用されておもちゃにされていただけなんだと、ショックが止まらない。
それから数日。
卒業式を終え、寮の荷物をまとめ、車を予約して迎えに借りて、道也が学園から立ち去る日が訪れた。
安倉野学園にも桜の花が咲き誇っている。
初めて安倉野に来た時の運転手とは全然違う運転手が顔を出した。
挨拶をして、車に乗り込もうとした。
「ちょっと、待てよ…………」
肩を掴まれた。
そこには、葵生川が、いた。
葵生川はびっくりする俺を抱擁した。
「沼間君、先生は……たったいま学園を辞めてきた」
「せっ、先生!?」
「私も車に乗るぞ、沼間君」
「先生……!!」
「沼間君っ!!」
「先生……!!!」
「沼間君っ!!沼間君っ!!」
「先生!先生!」
「沼間君────っ!!!」
熱いディープキス。
運転手がハンドルを切り車を運転している間中、人目も憚らず二人は車内で熱いキスをずっと交わし続けていた。
「先生……っ!先生……っ!」
「沼間君……っ沼間君……っ……ハァハァ……」
……その後道也君は、葵生川先生と共に暮らし初め、道也は初めて真実の恋愛感情が生まれた葵生川先生に、ネチっこく愛される人生を送ったという。
葵生川エンド 『葵生川先生、初めての……』
End
ともだちにシェアしよう!