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第5話 身に覚えのない知識

恵人が出て行った部屋の扉を開けた。 ここは……… 真っ暗だ。 しかし電灯をつければドアの隙間から漏れた明かりによって誰かに侵入を気付かれてしまう。 窓からの明かりだけを頼りに目を凝らしてみると……。 これは………瓶だ。 棚に所狭しと瓶が並べられている。 ホルマリン漬け? 中に入っているのは……僕は目を凝らしてみた。 !? 腕だった。 腕だけではない。 眼球が2つ並べられた容器。 唇らしきものが切り取られ浮かんでいる容器。 乳房だけが浮かんでいる容器。 気が狂いそうな光景がそこにはあった。 …………………。 確信したのは、いずれにしろ僕はこの屋敷にいると このホルマリン漬けの仲間になる、ということだった。 殺される。 医学生である恵人のこの部屋から去った姿が脳裏に浮かぶ。 あいつがやったのか? あのナイフで切り刻んだのか? いや、あいつだけじゃない。 繁も、執事も、きっと全員で……。 僕は強烈な目眩を覚え、すぐ傍らの棚に寄りかかった。 …………ん? これは…………! 【メス】だ。 メスがキラりと光って棚に置かれている。 僕はメスをしまった。何かの役に立つかもしれない。 見るとこのメスは幅広い手術に使用される標準的なメスで、広範囲を切り避ける切開に向いているメスだ。 ……ん?なぜ僕はそんなことが頭に浮かんだのだろう? 医者でも無いのに。 よく見ればこの部屋には更に奥に小さい扉がある。 多分収納庫だろう。 立ちくらみが収まってきた。 どうしよう? ⬜︎分岐⬜︎ *最初の部屋に戻る・・・このままスクロールして下に進んで下さい↓ *他の部屋を探す・・・次のページに進んで下さい。 ……ん?  戻る途中で何やら人の声が聞こえた。 トイレだろうか。 僕は耳をそばだててみた。 「ふひひ、繁の肌はすべすべだねぇ 手のひらも、何て美しい肌なんだい ほら、いつものようにお顔を貸しておくれ」 少しだけ、覗き込んでみた。 丁度死角となり、2人は気付いていない。 トイレの個室の扉が開いている。 中で、ぶよぶよの男は無表情で何の感情も示さないうつろな繁の顔を手で挟み、強引に地に足を着かせると、自分の腰の所に繁の顔を持っていった。    繁は特に何の発声もなく人形のようだ。 僕は不気味になりそこを離れた。 一旦心を落ち着けたい。 そうだ、一晩ベッドで寝てみるのもいいかもしれない。 明日になれば、きっと良い考えが浮かぶはずだ。 僕は最初の部屋に戻ろうとした。 最初の部屋に戻ろうとドアノブに手をかけた瞬間だった。 背後から僕は何か熱いモノに身体を貫かれた。 血が飛び散っている。 倒れながら振り向く僕。 這いずりながら見たものは…… 恵人だった。 恵人は瞳に何も映さない無表情で、血塗れのナイフを持っていた。 僕の血だ。 片手をあげて制止しようとしたが 恵人は顔色変えず そのままナイフを更に振り下ろしてきた。 《終》 badend 血塗られた人

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