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第20話 闇の犠牲者

黒い妖気漂う儀式場。 ここは何処だろう。窓のようなものは無く、全て黒布で四方を張り巡らされた黒い空間。 少なくとも、白三祢山の地下の儀式殿とはまた異なる、呪術のために拵えてある機洞一味達の造成した空間であった。 肌の色が一つ浮かぶ。黒いものに蝉のようにしがみつきもぞもぞと蠢く。長い髪を揺らす人肌。キメに汗が絡まるするりとしたベージュの肌。 艶かしい女の肌が、くびれた腰つきと丸い豊かな臀部をくねらせ、何かに絡まる。 絡まる相手は黒衣を着た機洞。 足を開き機洞の腰にしがみつき、また腕も機洞の背中に回り込んで絡ませていた。 女の首をがのけぞり、淫らな雷を内面に撃たれて、一際叫びを上げる。 そのまま長い髪を地に垂らし、仰向けに反り返って背後に首を下ろしたまま、微動だに動かない。気絶をしたのか。 機洞は女のしたたる陰部に人差し指を差し込むと、愛液と精液の混じり合った淫猥な露を指に絡ませ、誰かに向かって首をしゃくった。 すぐさま見鬼姫が、綺麗に磨かれた光沢あるツヤツヤの骸骨を献上するように白木台に載せ持ってくる。 底に布が敷かれた首。 骸骨の頭に梵字を描くように、一書きするよう、露をたっぷり潤わせた指を動かし、塗りつけた。 気絶した女は石狗に隣室に連れて行かれ、一瞬の叫び声と大きな骨がいくつも一度に折れ、割れる粉砕音が聞こえ、 しばらくすると黒い大盃に真っ赤な血を溜めたものを石狗が持ってくる。 髑髏をその盃に浸し、機洞は呪文を唱え続けた。 一通り儀式が終わると、盃の血に浸した髑髏を持ち上げ、機洞は叫ばんばかりに声を張り上げる。 「この外法頭を持ってして、古の僧伽の杭を浮かばせ清町市の地獄の扉を開けよ!!」 髑髏は一瞬青く、緑に、光る。 髑髏の目に人間のような眼球が宿り、黄色い輝きを発した。 機洞は薄く笑うも、髑髏の光はすぐ消え失せ、ただの骨董のような生命の消えた古くさい色に戻った。 「やっぱり……、こんな髑髏じゃダメか。欲しいのは長屋大王の定児の性法を経た精と俺の精が混じり合ったものよ」 失敗作に終わった髑髏を球技の球を扱うようにクルクルと乱雑に扱かう。 「この出来損ないの髑髏でも、人一人を速やかに殺すくらいには役に立つ」 それからしばらくして、不穏なニュースが金龍達の元へ飛び込んできた。 『田城建造が死亡!』 「たしろ?」 猪狩が首を捻る。 「金龍和尚、それってあのタシロですか?以前降霊をした時の、あの諸宮花涼が呼んだ名前ですか?」 渉流が聞き返す。 最清寺の境内。 金龍と青森、渉流と猪狩の四人の声が行き交う。 「そうです。あのタシロです。田城建造」 「市内に土建業や不動産業などを手広く広げている、まぁ、経営者の皮を被ったヤクザのようですねぇ。今でこそ経営者スタイルをとってヤクザを表には出してませんが、20 年も前はただの暴力団。一際過激にやっていたようです」 「ああ……ハハァーン、こいつが、諸宮一族殺害の実行者というわけか」 渉流が顎に手をあて、察したように胸糞悪い表情をし吐き捨てる。 「また腐った訳ですか」 猪狩が溜息をつく。 「路上で突然燃えたようです」 嫌な空気が、彼らの場を流れる。

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