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第23話御魂癒(H有)
金龍さんも、俺も、病院に運びこまれた。
緊急手術後に集中治療室に入れられる金龍さん。
俺は見た目の印象ほどよりは、体に傷が特に無いらしく、生体機能にも問題はないらしく、例によって点滴を打たれて寝かされるのみとなった。
渉流は、ベッドに寝る俺に向い、「俺は定児の親に伝えて色々準備して明日また来る」
病院には不似合いな神主衣装のままの青森神主に「申し訳ありません。今日は俺の代わりに定児を見ててやってください。金龍さんのことも、よろしくお願いします」と、日々と変わらぬ凛々しい顔つきで頼んで、病院を後にした。
二人、個室に残される。
青森さんは「災難でしたねぇ」といつもの緩い調子で喋った。
「…………」
「…………」
青森は答えない俺を見下ろす。
答えたくないわけじゃなくて、本当に唇を動かす気力がない。
何かを考え、指先一本でも動かそうと、脳に電気信号を通そうとすると、先までの忌まわしい苦しみの状態が、途端にすぐ脳裏に蘇ってきてしまうからだ。
フラッシュバック。
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青森 薔山は顔色からじゃ何を考えているか窺い知れない表情を癖のようによく披露する男だ。
この時も、ぼんやり空虚な瞳の定児を、同じ表情で見下ろしている。
物を申さずとも、他者の魂の状態から情報などは読み取れるからこその、これは人を探って解析している表情だったりするわけだが、勿論それを彼と接する周りの人々が理解できているわけもない。
定児の魂の状態が、大分、深刻に傷ついているのは視て取れてわかっていた。
このままだと数年は良くない心理状態、身体症状の不定愁訴に悩まされるのではないか。
というほどに、傷が黒くしっかりとえぐれて、魂にはついていた。
社樹学園で定児を取り戻した時でさえそんなのはなかった。以前までは見られなかったついたばかりの随分大きい生傷だ。
忍びない。
自分に出来る能力をここでこそ使わなきゃいけない場面だと駆られる。
青森の胸には迫るものがある。
せっかく自由に使える治癒の術、ここで使い果たし一生使えなくなろうとも、もちろんそんなことは起こらないけれど、この目の前の打ちひしがれる肉体に使わなければ、生涯、一体どこで使う場面だと、彼に迫るものがある。
青森は定児の額に手を置き、自らの力の開放を行い、自分の気の流れを丹田から操り注ぎ込んだ。
掌からは不思議な暖かい力が、置かれた当事者には感じられている筈であり、肉体の損傷だけでは無く、頭脳、そして魂の不具合も治すように、まずは波並みと力を注ぎ送る。
足の爪先から、履いていた#浅沓__あさぐつ__#を揃えて脱ぎ捨てると、ベッドの上、定児の寝ている傍に正座して座り、更に寝ている彼の体をストレッチするようにくの字に横向かせ、背中側から手をあてていく。
定児は気力のないままにされるがまま、何も反応はない。
背の骨のなだらかな隆起を感じる。
女の体と比べ、皮下脂肪が無く、ごつごつとしていて硬い。骨の形が、わかりやすく伝わるシンプルな体。
特に強い傷が視えるのは心の働きに関与する心臓と、それから腹部。
まるで出産後の女性の子宮の疲労や傷つきのような、腹部に広がるのは不自然な変色さだった。
子宮など無いはずなのにこれは。
一体どんな残虐な虐げや拷問に遭わされたのか、想像でしか測れないが、想像の範囲を優に超える。
「だめだ、手から伝うだけでは全然足りない」
定児から反響される影響が思わしくない。
青森は躊躇せず、定児が着せられているポリエステル素材の患者衣の前を開かせ、肌に直接触り送ることにした。
定児の体温がなまめかしく青森にも伝達されてきた。
背後から抱き締める形になり、心臓とお腹の上に直接左右の手を当て、エネルギーを送り込んでいく。
「う……うああっ!!」
途中、定児が恐怖を感じる声色で震え身を捩り、青森から離れようと激しく動いた。
「定児君、大丈夫!大丈夫ですよ、私ですよ~」
定児の額と目元を落ち着けるように手のひらで暗く覆う。
「こ、怖い………」
定児の唇はガタガタと震えていた。
自分の肌に触れる、男の体の感触が怖いのだろうか。
それとも何かされると恐怖が蘇ってきたのか。
「うっ!う!」尚も定児は暴れる。
離れようか、と一瞬迷ったが、青森は定児をぎゅっと抱きしめることにした。
「こうしてるだけで何もしないからねぇ……定児くん、安心してください…………」
言葉の抑揚にも慎重になり、青森は定児の首元から告げた。
そのまま暖かいエネルギーを送ろうとしているのだが、突然青森にも思いもかけなかった定児の行動が発生した。
定児のほうから青森の体の側に向いて青森の唇に自らの唇を押し当てて来たのだ。
「んぶっ!?」
青森は目がチカチカする。
男にキスされるなんて経験はある筈もないし、それが定児相手なら、より、思ってもみない出来事だ。
慌てて引き剥がし、両肩を掴んで、自分と定児の間に、間を空ける。
「定児くん!」
見ると、定児の息は荒く、目は焦点が合ってはいない。油汗ははなはだしく流れている。肩は小刻みにプルプル震えているままだ。
自分でも何をしているかが分かってはいないようだ。
「…………!!」
寄り添っていた体を動かそうと足を移動させた時、膝が硬い何かに当たり、青森はとっさに頬を赤らめた。
瞬時に足を引っ込めたが、当たった硬い感触は、定児の血が集まった上を向く陰茎だった。勃っている。
(…………これは……、どうしよう)
焦った。
定児のオーラに映るのは、恐怖、混乱、……エキサイトする興奮、が、入り混じったもの。
確かに網の目状の肉欲が、混沌とする精神に脈動し浮かんでいる。
快楽の異様な高揚は、彼の破壊寸前の心を守るためかもしれない。
隙間を空けたのにも関わらず、定児は青森にしがみついてくる。
「……うっ……うぅっ!……ううっ……う、ううっ!!…………」
青森の胸に埋もれ、定児は涙を流していた。
心を透視して見る。
男としての尊厳を奪われた涙。
「……うぅうっ!……うぅ……う!…………うぅぅ、ううっ!……う…………っ」
一連の餓鬼孕み術によって、やはり定児の男としての尊厳は崩壊していたのだ。
青森にそこまで深くの詳細は読み取れないが、彼の男としての尊厳が傷ついている男泣きは分かった。
心細い肩の震えに、気持ちが動かされてしまう。
それならば、と、先程押し当てられた唇を、今度は自分から押し当て、口を通して癒しの気を送り込んだ。息を送り込む様に、彼の肺、胃、それから広がる五臓六腑に気を送る。全身の経路を伝い、体中を循環する様に。暖かい春の息吹が、定児の中を枝葉を伸ばして廻る。
定児の二つの臀筋肉の間を、熱くハリある海綿体が割って押し入った。
「あ……ヒっ……ぃ……!!」
定児のそこは、大きなものが突立てられ、出て行くのに慣れている感触をしているのが#労__いたわ__#しい。初対面の、後ろの性交を知らない、晴れ晴れとした、曇りない少年だった頃の定児の姿を懐かしんでしまう。
こんなに陰の猥らな記憶を体に吸い込み染み付かせた定児は、まるで体内に淫欲蟲を飼っているよう。ざわついた蠢きの欲気が、男性器を包む。
抽送は繰り返され、根元まで飲み込んではすぐに抜け出す。
腸から発する僅かな分泌と、先端から生ずる弱アルカリ性の液、互いの粘液が混じり合う。
子犬みたいにひんひん言う定児の背を抱き、さすりながら繰り返し抜いては送る。
奥に到達する度に、定児は反射的に首を引き攣らす。
男を抱くなんて初めてだが、挿入された時の体の反応は女とそんなに変わらないんだなと、青森は思った。
「ぅ……、ううはっ!」
着物の白い上衣だけを前を明かしながら着ている青森の胴に、懸命にしがみつきながら、段々声が変わっていく。
既に治療衣は脱ぎ捨てられ、一糸纏わない。
赤く熟れた窄まりがピチッと開いて、男の性器を自由に出入りさせている。
「ひくっ……うはあっ……」
動きが強さを増す度に、青森を求める熱を、声と腕のしがみつく力に表していく。
自分への動きの、更なる激化を招くよう。
定児との接合から伝わる気持ち良さの震動に、青森も次第に捕らえられていく。
定児の淫欲の表示も、血が集中し、青緑の血管を浮かせ限界まで反り返っている。
青森の手にVラインの股関節や尻を撫でられながら、奥へ奥へと突立てられてゆく。
「うはぁっ……くはぁっ……う……はっ……ん……」
青森の自身が、速く動き回る。段階を分け、深くまで堀りつらぬく。
これまでの過程によって、すっかり男根と慣れ親しんだ定児の後孔は、収縮をもって、自分を掘るものを味わっている。
「……んはぉ……んはぁっ……ンああっ!!」
定児は足を広く開脚し、脛を伸ばし、完全に青森の男性器を受け入れている。
「く……んっ!んっお!うんああっ!」
青森自身の#這入__はい__#いりに従い臍の位置が動いて、上半身が持ち上がる。
動きながら、定児の魂が修復されていくのが視える。
魂のひび割れが補修され、めくれ落ちが戻り帰り、変形も#剥落__はくらく__#も元に戻っていく。
剥がれ落ちて隙間の空きそうだった部分に、いたわりの風が吹き、何も漏らさないよう埋め込んでいく。
#刃毀れ__はこぼれ__#、波打ちザラザラとした痛められた心が、円滑な丸みを帯び、表面がなだらかになっていく。
「んふっ!んふっ!んううっ!」
男根がぶち当たる度、背を掴む定児の力が益々強まる。
「ァ、アお!……もり……!……さァん、ンンンん…………!」
淫らに貫かれている内に、段々正気が蘇ってきたようだ。
少し肌寒い室温の病室中を、熱い淫らな呼気が迫る。
定児の肉の中に潜り込み、滑る都度に、青森の粘膜から浸透する快感。
10代の鮮やかな男の体臭に包まれながら、青森は得られる快感に添うまま、腰から下を休まず前進させ、定児の屹立が、浮き出た血管と共にピクピクと#攣縮__れんしゅく__#し、どんどん足を広げ昂りを訴えた。
開かれた足の間の陰茎の下の後孔を何度も、何度も、陰茎と睾丸に休まずぶたれ、定児の体中の快感の点線と点線とが接続され、脳髄めがけて走る。
「ふァうあっ!!い゛っ!!…………っくゥ~~~~!!」
深奥に来て大きく痙攣し、定児は目を閉じて息を吐き達した。同時に青森の精を身の内に浴びる。
#堰__せき__#を切った乳液が、先端から溢れ落ちて止まらない。
治癒の気を送られながらの交わりは、通常より高い快楽を定児の身に送り込む。
当然、定児は強い快楽に達するなり、足を開いたまま失神した。
青森は定児の達する様子を、顔色を変えず、ただ汗の粒を額に浮かばして、流れ落ちる玉を首筋に伝わせながら見ていた。
抜き取られた後の開いた孔は青森の体液を零しながら、収縮を数度繰り返し、再び閉口した。
終わると、青森は定児の記憶から、さっきまでの一連の行為全ての記憶を消した。
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