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第2話

 休み前の夜、いつものクラブに行くかと、仕事終わりの重い腰をあげたものの、気分になれない。  そんな日もある。  知った顔に会って適当な話すらするのが面倒な日。   ふらふら歩いて、帰るのもまだなんだしな~って時間だし。  目についたのは、ちょっと寂れたゲーセン。  学生の時はよく行ったなぁ。  ここなら知った顔に会わずに済むし、無心に筐体の前に座って懐かしいゲームでも楽しんでみるか。  明るいとは言えない照明と、音が溢れている店内。  空いてる台、男なら1回はやったことあるんじゃないか?な「スト○ートファイター」の台を選ぶ。  タバコに火をつけ、一服。  落ち着いてから、コインを入れる。  数年ぶりだけれど、いざゲームを始めてみると割と身体が覚えてるようで、必殺技の出し方も覚えていた。  もしかしたらボス戦までたどり着くかもな。  胴着を着た黒髪の日本人のキャラクターを使って、どんどん勝ち進んでて途中で気がついた。隣の空き台に座って、俺のプレイをガン見してるガキがいる。  後ろからなら分かるが、無遠慮な様子で、隣の椅子に座って覗きこんでいる。  まるで俺の連れかというぐらいの近さだ。  さっきまで集中できてたのに気が散る。なんだ、なんだんだこいつ、パーソナルスペースってもんないのか。  更に椅子を引き摺ってきて、近くにやってきて、俺の肩に顎乗せて観戦してやがる。そりゃさすがに、やりずれぇよ。無言の抵抗でさっきよりも無闇やたらにレバーとボタンを酷似して肩を揺らしてやった。  おかげでGAME OVERの文字。 「あーあー、負けちゃった。もう少しでボスだったよね?」 「誰のせいだよ。お前のせいだろうが。人の肩に顎乗せてたら操作しづらいくらい分からねーのかよ」 「あっ、オレが邪魔しちゃったの?ごめんなさい。100円出すから、もう一回見せてよお兄さん」 「もう気が逸れた。帰る」 「えーーーーー。もうちょっと見たかったなぁ。また来週見せてよ、お兄さん。オレ大体夕方この辺うろついてるから、きっとまた会えると思う」 「気が向いたらな」  なんだあのガキ。ほそっこい身体しやがって。  妙に整った女と間違われそうな顔してたな。あの制服、ここらじゃ有名な進学校のじゃねぇか。塾とか行かねぇのか。来週とか言われてまた来るかよ。  ガキはガキと遊んでろよ。

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