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第3話

 変な高校生との出会いがあった日から1週間後。今日こそクラブ行って、手頃な、ヤってさよなら出来そうな女でも探すかと思ってたはずだった。  仕事終わりのボーっとした足取りの俺の足が向かってた先は先週の寂れたゲーセン。  なんだよこれ。夢遊病かよ。起きてるのに。たちが悪い。 「あっ!お兄さ~~ん!」 「お兄さん!お兄さんてば!そこの全身黒コーデでレザージャケットがお似合いの夕方なのにサングラスかけた金髪の、先週ストリー…むぐっ」  呑気そうな大声で俺の外見の特徴を叫びだしたのは、先週、俺の隣にいたガキだった。 こんな街の往来でストリー○ファイターやってたお兄さんとか叫ばれるのはたまったもんじゃねぇ。言い終わる前に近づいて、喋れないように口をふさいでやった。  いやまて、今この状態も目立ってるな。 「おい、待たせたな。早く中入るぞ」  半ば強引に店内に入る。なんだ、このガキ俺と同じくらいの身長あったのか。いやむしろ俺より少し高いのか。ひょろひょろして細い腕と小さい顔だったから気づかなかったな。 「おいガキ、あんな所で叫ぶなよ。俺はここに来たわけじゃなかったのに、入る羽目になっただろうが」 「えっ、通りかかっただけ?」 「そうだよ!」 「なぁんだ。でも時間あるならオレ100円出すから、もう一回だけやってみせてよ」 「はぁっ?!」 「時間ない?」 「ない事もないが…」 「じゃぁ、はい」  最後まで聞かずに先週と同じ台に100円を入れるガキ。  何なんだよ、普段の俺なら完全に無視してるとこだ。  なんで素直にガキのいうこと聞いてゲーム始めたんだよ。  自分のわけのわからなさに多少イラつきながらも先週と同じス○リートファイターを始める。 「お兄さんの手の動き、やっぱりすごいね~」 ガキは先週はじわじわ近づいてきたけれど、今日は端から俺の肩に顎を乗せて見てる。 両手とも動かしてるから、顔揺れると思うんだけどな。 「お兄さんすごいねー」 「お兄さんお兄さん呼ぶな。本田健一って名前があんだよ。お前のお兄ちゃんじゃねぇよ」 「本田健一さん…。…健一、お兄さん!へへ~。オレはね、山中勇樹。お兄さんなら勇樹って呼んでいいよ!」 「ガキ…、お前の兄貴じゃ…」 「ガキじゃなくて勇樹!」 「あぁ、はいはい勇樹な…」  どうかしてたんだと思う。俺の事を全然怖がらないガキ。それどころかなついてるような素振り。  会ったばかりなのに。  俺は他人をすんなり受け入れられる人間ではなかったはずなのに。  両親と離れてからずっと、1人でやってきたけれど、この一風変わったガキ、勇樹に少しだけ興味が沸いたのかもしれなかった。

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