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第4話

「じゃぁな、ガキ。勇樹」  いい加減腹も減った20時半。何回戦かしてボスまで辿り着いた俺は、最終的に負けたものの満足して、適当に夕飯食って帰ろうとガキに別れを告げた。 「どこ行くの?」  ヘラヘラ笑ってばかりだったガキが服の裾を掴んで不安げに聞いてくる。 「あぁっ?飯食って帰るだけだ」 「飯…オレもついてっていい?」 「お前、親に連絡とかしなくていいのか?」 「親…大丈夫だから!」  親って言った時の怯えるような表情。なんか問題あんのか?まともな親の元で育った俺には想像つかないような事を抱えてるような気がした。  そんな面倒事に関わるのはゴメンだ。頭では分かってる。  なのに俺がとった行動は、ガキの首の後ろの服を掴んで、 「行くぞ」 と、一言発するというものだった。  なんなんだよこのガキ、俺ってこんな奴だったか?いちいち行動を狂わされてる気がする。 「牛丼食べたら帰るぞ」 「え~、牛丼じゃすぐ食べ終わっちゃうじゃん。オレもお金出せるから、焼肉行こ!焼肉!ねっ!決まり!」 「お前勝手になぁ…」 「焼肉嫌い?」 「嫌いじゃねーけど」 「じゃっ、決まり~!」  誰かと焼肉なんていつぶりだろう?学生時代以来かもしれない。向かった先は焼肉のチェーン店。そこそこリーズナブルに食べられる店。 「2名様ですか?」 なんて店員が聞いてくるのも、こそばゆい感じがする。生中が先にテーブルに届き、ガキはドリンクバーを取りに行った。  …くそ…なんでこんな事になったんだ。タバコに火をつけながら少し戸惑っているものの、この状況を面白く感じている自分もいた。 「ねぇ、それって美味しいの?」 手に持ったグラスの中身は明らかにコーラだろうガキが聞いてきた。 「こいつのことか?」 「そう、タバコ!」 「俺のは…ラ○クはちょっと初めて吸う奴には勧めねぇな」 「ふーん。吸わせて」 「だから勧めねぇって」 「一口だけ!」 「お前どうみても未成年だから、店出たらな」 「…………」 「なんだよ、なに笑ってんだよ」 「意外とそういうとこ厳しいんだなと思って」 「なっ…。別にいいんだぜ俺は。ただ周りの目があるだろ!あの大人未成年にタバコ吸わせてるわとか、注意されたら面倒だろ」 「意外意外!今までで一番慌ててるし!健一さんみたいな強そうな外見の人に誰も注意してこないって。こっそり陰口は言うかもだけど」  コーラをテーブルに置いて、その横に突っ伏して笑うガキ。俺がそういう事気にしたらそんな可笑しいかよ。 「おい、肉きたぞ!あんまり笑ってるとお前の分も食べてやるから」 「わっ、健一さん、ごめんなさいごめんなさい!食べる!食べます!」  こんな賑やかな食事いつぶりだよ!ってくらい煩かった。  ガキ……勇樹は、俺、肉焼くの上手いんだかんねって焼くのと食べるの担当するから健一さんはのんびり食べて~なんて言った癖に焦がすわ生焼けだわ、結局俺が焼いてやった。 「健一さん上手だね!」 って、美味しそうな顔で食べる勇樹を見てるのは、悪い気はしなかったな。

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