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第5話

「じゃぁな、お前今度こそ帰れよ」 2人だけなのに賑やかな焼肉は気がついたら22時半になっていた。  一応年上だし多めに払ってやろうとしたのを察したらしいガキが、オレがムリヤリついてきたんだからと言い張って割り勘で支払いを終えた。 「えっとぉ…帰らなきゃダメ?」 「はあ?!」 「健一さんの家泊まっちゃダメ?」 「お前家あんだろ?家」 「あるっちゃあるんだけど…」 「なら帰れよ」 「ないと言えばない」 「どっちなんだよ」 「帰れないって言い方が合ってるかなぁ………。そう、帰れないんだよ。うーん。これは困ったぞ。そうだ、健一さん、泊めて?」 「白々しいな。帰りたくないじゃなくて、帰れないなのか?」 「うん」  嘘かもしれないし本当かもしれない。髪をかきむしって考えた。 「あーー、しゃぁねえなぁ!言っとくけどうちに客用の布団とかないからな」 「いいよ、健一さんと一緒の布団なんて余計に楽しいじゃん」  男の1人暮らしらしく程々に散らかった部屋。ワンルームにちょっとした台所が別にあって、ユニットバス。1人でいるのには十分のはずだった。ガキは物珍しそうに部屋をキョロキョロ見回している。何がそんなに珍しいんだ? 「そうだ、先に風呂使っていいぞ」 「へっ?」  そんな事で驚くか?大きめな目を更にかっぴらいて俺を見てる。 「オレ………て、いいの?」 「はっ?」 「……………いいの?」 「聞こえねーよ」 「だから!…ラしなくて…いいの?」 「だから、肝心なとこ聞こえねーって言ってんだろ!」 「だから!フェラしなくてもいいの?って聞いたの!」 「はぁ?何言ってんだよお前、そんなつもりで連れてきたわけじゃねぇんだから、ガキは風呂入ってさっさと寝ろよ。パジャマとか下着貸してやるの用意しとくからとっとと先に入れよ」 「……うん!」  なんだあいつ…。どんな生き方、育ち方してきたんだよ。  家帰れないって言うわ、男が男にフェラしなくていいのか訊いてくるわ、まぁ確かにあの顔なら男だろうが関係なくそそるって奴もいるんだろうけど。  悶々と他人の事を考える珍しい俺の耳に入ってきたのは能天気な声。 「健一さ~ん。タオルこれ使っていいの?置いてある服着ていいのーー?」  さっきの不安げな奴と同一人物かとツッコミたくなる程に明るくて悩みなんてなさそうな声。  さっきのはやり取りは何だったんだ…。

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