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第6話
「タオルだの着替えはそこにあるの使っとけ」
「ありがとーーー」
「ふぅ。お風呂あったかかったよ。健一さんも冷めないうちに入ってきたら?」
こいつ…俺と身長そんな変わらないと思ったんだが、手足が長いのか…。ちょっと寸足らずな裾が憎らしい……。
「健一さん?」
「あぁ!入ってくるよ!あったまれば背も伸びるかもな!ガキは先寝てろよ!」
急にキレぎみな俺にキョトンとしながらも、お休みなさーいなんて声をかけられ風呂に向かった。
今時のガキは成長が…栄養が良くて成長が……手足が長いのが特徴かよ!くそっ!10歳も変わらないのに世代の差を感じてしまった。
170センチは越えてるがもう少し欲しかった…俺のちょっとしたコンプレックスは身長なのだった。
ガキを泊めてから1週間。ん?一泊だけの予定じゃなかったのか?
ガキはまだ…うちにいた。正確に言うと、土日で家に荷物やら着替えやら学校で使うものを取りに行き、大荷物を抱えて勝手に戻ってきたのだ。
てっきり帰ったものと思い、いつも通りの日常が戻ってきたとゆっくりしていた俺に聞こえてきたのは
「健一さん開けて~!助けて~!手が塞がってて開けられないんだよ~!」
と、人の家の前で騒ぐあいつの声。
思わずタバコの煙を思い切り吸い込みすぎて噎せた。
玄関を開ければ本当に両手いっぱい、背中にも大きなリュックをしょったガキ。え~と、勇樹だったな。
マジかよ、こいつどうやって、これで電車乗って歩いてきたんだよ。
家に帰れないって言ってたな…そうしなけりゃならないような理由があるのか…?
またも柄にもないこと考えちまってな。
会ったばかりだってのに、調子崩されて部屋にあげてしまった。ほんと調子狂う。
「健一さん。オレ、掃除とかご飯の用意したりとか、出来ることやるし、食費も出すし、ここにいさせて?…くれるよね!」
いさせて?までは可愛げがあったけど、なんだその自信たっぶりに「くれるよね!」ってのは!俺がそんなお人好しにでも見えるのか!
「嫌だ」
「健一さん!オレこの大荷物また持って帰るの嫌だよ」
「嫌だよってお前……勝手に戻ってきたんだろうが。俺一言もここに住んでいい?なんて聞かれてねーし、許可した覚えもねーし、何で急に荷物持ってきてんだよ」
「…だって、訊いたらダメって言うじゃん?」
「そりゃ言うよ」
「なら、訊かないで直接荷物持って来た方がいいじゃん」
「なんっで、そんな突飛な考えになんだよ。とにかくダメだ、面倒は嫌いだ、お前いたらぜってーめんどくさい気がする」
玄関の外に押し戻して閉めかけた隙間に奴は足を挟んできやがった。
「叫ぶよ?生き別れの兄が部屋にもいれてくれないって大声で叫ぶよ?」
「マジでなんなんだよお前!脅迫してるつもりかよ、たちわりぃぞこのガキが!」
「大家さーーーーん!この人…むぐっむごごっ」
「早く入れよ」
振り回されっぱなしかよ。情けねーな俺としたことが。
「へへっ、健一さんありがとね」
「ありがとじゃねーだろ、脅迫して入ってきたようなもんだろうが」
はぁぁぁとわざとらしく大きなため息をついてみせる。
「で?で、お前ここで何してくれるんだっけ?お前置いて俺になんか得あるの?」
途端に花が咲いたかのような笑顔を見せてくる。
「料理と掃除!食費も出すし、夜のお相手もするよ!」
「お前さぁ、こないだ焼き肉もまともに焼けなかった奴が普通に料理できるとか思えねーんだけど?」
「うっ、うぅっ、がんばるから…」
「あとは掃除と夜の相手?掃除はいいとして。夜の相手って何するか分かって言ってんのかよ?」
「分かってるよ!健一さんとならいいと思って来たんだから!」
フェラするとか言ってきたのはふざけて言ったわけじゃなかったんだな。
「ふ~ん、じゃぁ、やってみろよ」
「えっ?」
「夜の相手できんだろ?まだ夕飯前だけど、溜まってっから」
「出来たら住んでいい?」
「あぁ」
「分かった」
決心したかのような顔をしたガキが、近づいてきて、俺のズボンのベルトに手をかけた。
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