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第52話

昨日からうわのそらの俺は気づけば午前中の授業が終わっていた。 「涼ちゃんご飯一緒に食べよ。」 光生の声に振り向くとずっと寝ていたみたいで綺麗にセットされていた髪が少し崩れている。 「あははっ!前髪ボサボサになってる!」 俺が髪を整えてあげると光生は嬉しそうに笑った。 「いつのまに機嫌直ったの?」 「別に機嫌悪くなってないもん!!ねぇ!外でご飯食べたい!」 「はいはい。どこでもお好きな所どうぞ。」   今日はいい天気だし日向ぼっこしながら食べられるなんて最高だ。ウキウキしながらカバンを持って教室から出ようとした時誰かに話しかけられた。 「あの、佐倉くん!飴食べる?」 「え?俺?」 あれ?この子入学式の日に光生に連絡先聞いてた黒髪の女の子だ。なんで俺に? 「うん!あ、いらないよねっ、急にごめんね!」 俺が固まっていると女の子は一緒にいた友達と帰ろうとしていてせっかく話しかけてくれたのにと思って引きとめる。 「いや、飴ほしい!ありがとう!」 「本当!?いちご味とぶどう味どっちがいい?」 「いちご!!俺の大好物!!」 すると嬉しそうな顔をして俺に飴をくれた。なんで光生じゃなくて俺なんだ?と頭の中でぐるぐる考える。 「はい、どーぞ!あ、私の名前も苺って言うの!山下苺(やました いちご)!」 「え?そうなの?いーなー!かわいい名前!」 「えへへ、ありがとう!!」 なんてかわいらしい子なんだ。そう思っていた時後ろから不機嫌な声が聞こえた。 「俺おなかすいたんだけど。」 後ろを振り返るとムスッとしている光生がいた。

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