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第81話 光生side
「いってきまーす。」
俺はいつもより早めに家を出て通学路の交差点まで急ぎ足で向かう。
「今日は寝坊してなかったらいいけど。」
一緒に行く約束はしていないけどいつも丁度この交差点で会うから涼が来るまでのんびり待っていようなんて思っていたら涼が先に立っているのが見えた。
「…なにしてんの?」
俺が声をかけると涼はニコッと笑う。
「光生のこと待ってた!」
「え、、なんで?」
「なんでって一緒に学校行こうと思って!」
「え?そのためにまさか早起きしたの?」
「うん!目覚ましのアラーム1分置きにかけたんだから!まあ、余裕だったけどね!」
そう言ってドヤ顔で話す涼に俺はたまらなく嬉しくなる。
「ふふっ、そっか。ありがと。」
涼の頭を軽く撫でて歩き出そうとした瞬間俺の袖をちょんちょんと涼は引っ張った。
「ん?どうした?」
顔を見ると涼は目線を外して恥ずかしそうにしている。
「……あのさ、、まだ朝早くて人いないから、、5分だけ、、手繋がない……?」
急に俯くからなにかと思えばこんなかわいい事を言ってきた。俺がすぐに返事をしなかったからか涼は顔をあげて不安そうな顔をする。
「あっ、、嫌だったら全然このままでいいんだけど、、」
嫌なわけがない。いつも急に俺が嬉しくなるような事を言い出す涼の事がこんなにも大好きなのに。俺は無意識に上目遣いで見てくる涼の手をギュッと握った。
「涼にそんなこと言ってもらえて朝からすっごい幸せ。」
俺の返事を聞くと涼はへへっと笑いギュッと握りかえして繋いだ手を大きく振りながら歩いていく。
「もしかして昨日俺が言ったこと気にしてくれてたの?」
俺がきっと昨日妬いたなんて言ったせいで涼は優しいから気を遣ってくれたんだろう。そのために苦手な早起きをしたのかと思うとやっぱり昨日あんなこと言わなければよかったなんて思ってしまう。
「んーん、違う!俺が光生と手を繋いで歩きたかっただけ!」
申し訳ないなと思っていたのが伝わってしまったのか全力で否定する涼に俺の心は一気に軽くなっていく。
「光生って手も大きくていいなぁ〜!」
隣で無邪気にニコニコと笑って話す涼がかわいくてずっとこの時間が続けばいいのになんて本気で願ってしまう。
「ふふっ、手も、、ってことは他にもどこかあるんだ?」
きっと無意識に言ったであろう涼の発言をからかえば顔を赤くしていつものように俺のことを睨んでくる。その顔が見たくてわざとからかっている俺の気持ちを知らないところがまたかわいくてたまらない。
「っ!!ない!他はない!!」
「あははっ、拗ねちゃった!」
「んもうっ!!5分経った!!」
絶対にまだ5分経っていないのに繋いでいた手はパッとあっけなく離されてしまった。
「は?早くない?絶対あと3分くらい残ってるでしょ。」
「残っててもだめ!!」
「えー、涼のケチ。俺だって早起きがんばったのに。」
「それは、、、」
「じゃあこの残った3分また今度使っていい?」
俺が不貞腐れれば涼は少し困った顔をした後にゆっくりと頷いてくれた。
「ふふっ、やったー!」
「…そんなに喜ばなくても、、」
「お楽しみが増えたんだからそりゃ喜ぶでしょ。」
「ちょっ!なんでいつもそんな恥ずかしいこと平気で言えるんだよ!」
「はははっ!俺は別に恥ずかしくないもん。てか昨日帰ってテストの勉強したの?」
「もちろんしたに決まってるでしょ!光生と違って勉強しないとできないもん!」
怒っているのになぜか楽しそうな涼はいくら見ていても飽きない。そんな涼と話しながらだと学校に着くのは一瞬で俺の幸せな2人きりの時間はあっという間に終わってしまった。
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