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第84話
「ねぇ、これおかわりしていい?」
「もちろん!食器貸して!」
苺ちゃんは慣れた手つきでご飯をよそってくれた。
「ありがとう!」
「わっ、そんなに急いで食べると喉つまっちゃうよ!」
どれもおいしすぎて勢いよく口にご飯を詰め込む俺を見て苺ちゃんは心配してくれた。
「だいじょーぶ!俺早食いだから!」
「えー!そうなの!?」
少し安心したように微笑む苺ちゃんはきっと優しい子なんだろう。いやこんな俺にご飯を作ってくれるんだから間違いなく優しい。
「佐倉くんは普段料理するの?」
「お恥ずかしながら全く。ご飯の炊き方も知らない!」
料理ができる人の前でできないなんて言うのは恥ずかしい気がしたができないものはできない。
「ふふっ、じゃあ食べる専門だ!」
そんな俺に苺ちゃんはニコニコとフォローをしてくれる。
「えへへっ、苺ちゃん優しい!」
「えー、そんなことないよ!」
初めてこんなに話して盛り上がっていた時、隣からグラスを少し強めに机に置く音がした。
「あっ、椎名くんお茶おかわりする?」
「ん、ありがと。」
光生はニコッと笑って空になったグラスを差し出した。
そういえばご飯を作った本人が食べずにさっきから俺達に気を遣ってくれていることに気づき俺はとっさに持っていた箸で煮物を掴む。
「ごめん!苺ちゃん食べてなかったね!はい、口開けて!」
苺ちゃんの顔の前に差し出すとびっくりした顔をしたあとにパクッと一口食べてくれた。
「、、、ありがとう!」
なぜか少し照れている気がするがモグモグと食べているからまあいいかなんて思っていた時、箸を持っていた手をぐいっと引っ張られる。
「俺にもあーんして食べさせてよ。」
引っ張られた方を向くと光生はそう言って口を開けた。
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