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第112話
「ちゃん付けで呼ばれるの好きだから私の事は夢ちゃんって呼んで!」
突然そう言ってくる夢ちゃんは見た目は少し派手なのに話し方が柔らかくてそのギャップにきっと学校の男子はドキドキしているに違いない。こんなにスタイルも顔も良くて愛嬌もある子が俺と仲良くしてくれる事がすごく嬉しい。
「わかった!夢ちゃん!」
名前を呼んでみるとニコッと笑い返事をしながらユニフォームをテキパキと洗っていてその姿はとても楽しそうだ。
「さくらちゃんこれ干していって!」
「わかった!」
俺も気合いを入れて大量の洗濯物を干せば夢ちゃんは大きな拍手をしてくれる。
「さくらちゃんめっちゃきれいに干してくれてる!すごい!」
大したことないのにこんなことで大袈裟に褒めてくれるところがなんだか光生と似ていておもしろい。
「そうかな?ありがとう!」
「もうこのままずっとマネージャーしてくれたらいいのに〜!」
鼻歌を歌いながら隣に来て俺の顔を覗き込むとセミロングのきれいな髪がふわっと風になびく。光生と仲が良いだけあって髪もサラサラだ。
「あ!そういえばさっき聞こうと思ってたことがあるんだけど、、!」
「ん?なに?」
目をキラキラと輝かせる夢ちゃんに首を傾げれば周りに聞こえないようになのか耳に手を当てられた。
「さくらちゃんって椎名と付き合ってるんでしょ?」
何を聞かれるのだろうと思えば小声でそんな事を言う夢ちゃんに俺はびっくりして勢いよく体を離す。
「えぇ!?なんで知ってるの!?」
「うふふっ!実は椎名と家が近くてたまに帰り道にばったり会うんだけどいつも楽しそうに涼が涼がってずっとさくらちゃんの話ばっかりしてるからもしかしてと思って椎名に聞いてみたの!そしたらすっごい嬉しそうに付き合ってるって言ってたから!」
急にいろんな情報が頭に入ってきて混乱する俺に夢ちゃんは話を続ける。
「最初は涼って名前しか椎名から聞いてなかったから星くんにさくらちゃんって言われても気づかなかったんだけどさっき教室でフルネーム聞いてピンときたの!」
へへっと笑う夢ちゃんは顔を輝かせながら俺のことを見ると急に慌てだした。
「あ!この事は誰にも言ってないし私がしつこく椎名に聞いただけだから怒らないであげて!」
「ううん!大丈夫、全然気にしてない!」
俺が怒ると思ったのか光生の事をフォローする夢ちゃんは付き合っている事を知っても誰にも話さず秘密にしてくれているらしい。すごく気をつかってくれているのが伝わってきて俺の心は温かくなる。
「それと椎名と私が仲良いの心配しなくていいからね!私ずっと付き合ってる彼氏いるんだ!」
「え!?そうなんだ!夢ちゃんすっごいかわいいからそりゃ彼氏いるよね!」
「きゃー!さくらちゃん優しい!大好き!」
満面の笑みで笑いかけてくれる夢ちゃんは本当にきれいでかわいくて彼氏がいても声をかけられるくらい絶対にモテていると俺は確信した。
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