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第115話 光生side
「どうしたの?なんかあった?」
「あっ、いや特に何もないんだけど、、」
電話に出ると涼は申し訳なさそうに話す。
「ごめんね、、光生寝てたよね?」
「え?なんでわかったの?」
「だってすごい寝起きの声してる、、起こしちゃってごめんね、、」
そんなことで謝らなくてもいいのに電話越しに声を聞くだけでしょぼんとしている涼が簡単に想像できる。きっといましている落ち込んだ顔もかわいいんだろうなと思うと俺の頬は自然と緩む。
「全然。まだご飯も食べてないしお風呂も入ってなかったから丁度起こしてくれてよかった。」
「……光生優しすぎだよ、、」
涼はどこに照れたのか恥ずかしそうに小さな声でそう呟いていて俺の胸はきゅっとなる。
「ふふっ、かわい。なんか涼の声聞いてると会いたくなってくる。」
「ん、俺も会いたい。」
てっきり明日学校で会えるじゃんとか言われるのかと思っていたらめずらしく甘い雰囲気の涼に俺の心臓は急に早くなる。
「そういえば光生風邪は?大丈夫なの?」
そんな涼にドキドキしていたら急に話題を変えられガックリする。それに俺の体調のことなんてマネージャーと星くんのことばかり考えて忘れていた。
「もう全然余裕。涼がのど飴食べさせてくれたおかげだね。」
「ちょっ!!いちいちそんな恥ずかしいこと言わないでって!」
「あははっ、いいじゃん!嬉しかったんだから!」
さっきみたいに素直な涼も大好きだけどこうやっていつものように怒る涼もかわいくて同じくらい大好きだ。
「マネージャーは楽しかった?」
ずっと気になってしょうがなかったことを聞いてみる。でもいざ聞いてみるとなんて返事が来るのか少し怖い。これで星くんのことを好きになったとか言われたら俺はもう立ち直れない気がする。
「うん!楽しかったよ!そういえば明日もすることになった!」
「……明日?」
予想していなかった返事に俺の頭は困惑する。
「ごめんね。だから明日も一緒に帰れない。」
さらにそんなことを言われると俺はショックどころの話ではない。それでも涼には嫉妬して困らせたくないしそんなかっこ悪いところを見せるわけにもいかない。
「大丈夫。気にしないで。」
正直全く大丈夫ではない。それでも俺は余裕のあるフリをする。
「……光生の家に今度泊まりに行く約束したの覚えてる?」
突然そんなことを聞く涼に不思議に思いながら返事をする。
「ん?覚えてるけどなんで?」
「……なんか俺、ちょっと一緒に帰ってないだけで光生不足になっちゃった、、」
なにかの聞き間違いだろうか。それか俺は自分の都合の良いように涼が話す言葉を変換しているのだろうか。
「それに、、今日の保健室の時も光生にちょっとしか触れなかったし、、」
「……え?」
「今も声聞いてたらなんかすごい光生と一緒にいたくなってきて、、ってごめん!俺なんか変だよね、、!」
なんでこんなに俺のことを喜ばせてくれるんだ。今日ずっとモヤモヤしていた気持ちは今の一瞬で消え去っていった。
「俺もずっと涼が足りなくて困ってたけど?」
「……え?光生も?」
きっと涼が思ってる以上に足りない。今すぐにでも涼は俺のだってわからせたいぐらいだ。
「うん。今日だって1人で帰るのすっごい寂しくてしょうがなかったんだから。」
わざと少し怒ったように言ってみると落ち込んだ声で謝っていてそれがかわいくてたまらない。
「うぅ…ごめんね……怒ってるよね?」
「ふふっ、うそうそ。怒ってない。涼がかわいくてついいじわる言っただけ。」
「本当?怒ってたらどうしようかと思った!」
まあ怒ってたというより勝手に嫉妬して不機嫌だったんだけどそれを言ってしまえば優しい涼を傷つけてしまうからこれは内緒だ。
「ねぇ、今週の金曜日泊まりに来てよ。」
今日が水曜日だから明日はマネージャーをするし明後日が1番早い。次の日は休みで丁度良いし1秒でも早く涼と2人きりになりたい。
「うん!金曜日行く!楽しみ!」
「ん。じゃあ俺お風呂入ってくるからまた明日ね。」
「え、、あっ、うん!また明日!」
なぜか涼はまた急に照れた様子で慌てて返事をする。
「ふふっ、なに?俺の裸、想像しちゃった?」
それがかわいくてわざとからかえばまた電話越しに怒る声が聞こえてくる。
「っ!!してない!」
「じゃあ一緒に入りたくなったとか?それなら今から来て一緒にお風呂入ってもいいよ?」
「っもう!!入らないって!じゃあね!」
恥ずかしいのか怒りながら一方的に切られた電話がかわいすぎてしばらくにやけていたのは俺だけの秘密にしておこう。
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