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第117話

「やっほー!さくらちゃん!」 体育館に着くと星くんは俺たちの所へ走ってきてくれた。 「星くんもう練習してたの?」 「ん?そうだけど?」 他の人達はまだ来ていなかったり準備したりしているのに星くんは誰よりも早く練習していてすごい。それなのに当たり前のように返事をするところが星くんらしくていいななんて思ってしまう。 「じゃあ2人とも今日もよろしくね!」 気遣いまで完璧な星くんはグッドポーズをしてまた練習に戻っていった。 「星くんってさくらちゃんのこと大好きだよね!」 夢ちゃんはニヤニヤした顔でそんなことを言う。 「そうかな?きっとゲームの話ができるから俺と仲良くしてくれるんだよ!」 「えー?それだけ?絶対あれはさくらちゃんのこと恋愛の意味で狙ってる気がする!」 「あははっ!なにそれ!あんな爽やかでモテモテな星くんが俺のこと狙うわけないよ!てかそもそも俺、男だし!」 「でも椎名だって男じゃん!私の直感すごい当たるんだからね!」 言われてみれば光生も男だけど星くんが俺を恋愛対象で見るなんてありえない。何回否定しても納得してくれない夢ちゃんはそれからしばらくの間星くんは俺のことが好きだと言い続けていた。 「さくらちゃん2日間本当にありがとね!」 練習が終わり片付けをしていたら星くんは俺にジュースをくれた。 「俺にくれるの?ありがとう!このジュース大好きなんだよね!」 前にテスト勉強の時に光生がくれたのと同じリンゴジュースだ。それ以来俺にとっては思い出の味になっている。 「あははっ!そんなに喜ぶ?」 「うん!前に光生が同じやつくれたんだ!」 「そうなの?じゃあこっちと交換!」 なぜか突然星くんが持っていた飲み物と変えられ俺の手にはカフェオレが渡される。 「星くんもリンゴジュースが飲みたかったの?」 「さくらちゃんって鈍感でしょ?」 「俺?鈍感かな?」 なんのことを言っているのかわかっていない俺を見て星くんは微笑む。 「カフェオレ見たら俺のこと思い出してくれるかなって!」 「…え?」 「あははっ!さくらちゃんすごい難しい顔してる!絶対意味わかってないでしょ?」 「全くわかんない。どういう意味?」 なんで俺に思い出してほしいんだ?カフェオレを見ながら考えてみるけどわからない。 「ただのやきもちだから気にしないで!」 そう言い残して星くんは今日もまた残って練習するのかコートに戻っていった。やきもちって何になんだろう。今のセリフだけじゃ結局答えを教えてくれたのかもわからないし余計謎だ。 「さくらちゃーん!片付け終わった?一緒に帰ろうよー!」 夢ちゃんは相変わらず元気いっぱいで今日も俺と一緒に帰ってくれるらしい。 「私おなかすいた!」 「俺も!」 途中コンビニによってチキンを買って2人で食べながら帰ればいつもより美味しく感じる。こんなに楽しいのに明日からは夢ちゃんと帰れないんだと思うとかなりショックだ。 「さくらちゃんまた今度一緒に帰ろうね!私がマネージャー休みの日に椎名には内緒で!」 夢ちゃんはそんな俺の気持ちを一瞬で吹き飛ばすようなことを言ってくれる。目が合うといたずらっぽく笑う夢ちゃんはやっぱりかわいくて大好きだ。

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