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第118話
「涼早く帰ろうよ。」
あっという間にお泊まりの日が来て俺は少し緊張している。いや少しというよりかなりだ。今日1日なにも集中できなかった。
「なに?考え事?」
「うわっ!近いって!」
ついに今から泊まりに行くんだと考えていたら目の前に光生の顔が現れ心臓が飛び出るかと思った。
「今日の涼、変なの。置いて行っちゃお。」
俺とは違っていつも通りの光生はスタスタと歩いて教室をでていきすぐに見えなくなった。俺も急いで帰る支度をして追いかければ光生は下駄箱で待っていてくれてその姿にまた大好きになる。
「それでね夢ちゃんチキン3つも食べててその後コーラを一気飲みしてたんだよ!すっごいおもしろかったんだから!」
「あぁ、あいつ大食いだから。揚げ物大好きらしいよ。」
「ぇえ!?なのにあんなに細くてスタイルいいのすごくない?」
「全然すごくない。俺の方がスタイルいいし。」
「だからなんですぐに夢ちゃんと張り合うんだよ!」
絶対に夢ちゃんのことを褒めない光生はやっぱり子供っぽい。それでも夢ちゃんのことを信頼してるのが話していると伝わってきて俺は勝手に微笑ましくなる。
「ただいま〜」
話しているとすぐに家に着いた。ドアを開けるとバタバタと足音が聞こえてきて小さい女の子が走ってくる。
「兄ちゃん!おかえり!」
「うん。ただいま。」
妹がいるのは聞いていたけどこんなにかわいいなんて聞いていない。というか急にお兄ちゃんの顔になった光生がとてつもなくかっこいい。
「兄ちゃんの友達だー!」
俺に気づくと、ぱあっと満面の笑みで俺を見るその子は光生と顔がそっくりだ。
「涼って言うの。兄ちゃんの好きな人。」
俺のことを紹介してくれるのは嬉しいんだけどまだ小さい妹にそんなことを言っていいのだろうか。
「これ妹の莉緒。まだ幼稚園だけど子供扱いするとすぐ怒るから要注意。」
「ちょっとまって!なんでこんなにかわいいって教えてくれなかったの?」
「そう?普通じゃない?」
どこが普通なんだ。俺のことは毎日のようにかわいいと言うくせになんで莉緒ちゃんのことを普通だと思うのか全く理解できない。
「あら!涼くんいらっしゃい!早く上がって!」
それからすぐに光生のお母さんがやってくる。前に1回少し会っただけなのに名前を覚えてくれているなんて嬉しい。
「兄ちゃんの好きな涼くんこっち来て!」
莉緒ちゃんに手を繋がれぐいぐいと引っ張られる。こういう所も光生と似ていてつい笑ってしまう。
「わっ!おじゃまします!」
リビングにつれていかれるとそこには見たこともないくらい豪華な食事が並べられていた。
「私と莉緒はこれからおばあちゃんの家に泊まりに行くから2人で食べてね!」
「わぁ、ありがとうございます!すごい!どれもおいしそう!」
「やだ、涼くんかわいい!光生なんてそんなこと一言も言ってくれないのよ!」
絶対にここの家族のほうがかわいいのに親子揃って俺のことを褒めてくれるなんてどれだけ優しいんだ。
「涼くん!莉緒のお部屋来て!」
「うん!」
「あらあら、莉緒も涼くんのこと大好きになっちゃったのね!」
俺と莉緒ちゃんが話しているのを光生のお母さんはすごく嬉しそうに見ていてなんだか俺まで嬉しくなった。光生と一緒に莉緒ちゃんの部屋に行けばいろんなものを次々と見せてくれる。
「ごめんね。涼にすごい懐いちゃってさっきから騒がしいでしょ。」
「ううん!かわいすぎて逆にお礼を言いたいくらい!」
「莉緒!ほらもう終わり!母さんがばあちゃん家行くってよ!」
「やだ!涼くんとまだ一緒にいる!」
俺から離れない莉緒ちゃんを光生は慣れた様子で説得している。それからしばらくして光生のお母さんと莉緒ちゃんは出かけて行った。そして光生と2人きりになってしまった俺はまた緊張してきてどうにかなりそうだ。
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