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第119話
「お腹すいてる?先にご飯食べる?」
「うん!もうお腹ペコペコ!」
お腹をさすりながらそう言えば光生はテキパキとご飯を温めてくれる。
「いただきます!」
全部俺の好きな料理でどれから食べるか迷っていると光生は目の前にあった唐揚げを食べさせてくれた。
「んん!おいしすぎてほっぺた落ちそう!」
「あははっ!母さんが聞いたら絶対喜ぶよ。趣味で料理教室の先生してるから。」
「え!そうなんだ!こんなにおいしいご飯が毎日待ってるなら学校終わったらすぐに家に帰りたくなるね!」
「そう?あ、でも父さんはたまに母さんの料理が食べたくなったって急に帰ってくる。」
「そう言えば光生のお父さん見たことない!やっぱりかっこいい?」
俺は初めて聞くその話がすごく気になるのに光生は興味なさそうに話す。
「いや、普通。父さんは海外に住みながら仕事してるからたまにしか帰ってこないし。」
「海外!?絶対すごい人じゃん!」
「すごい人ではないけど言ってなかったっけ?」
また光生はこうやってびっくりするようなことをなんでもないかのように話している。
「ほら食べ終わったならお風呂入っておいで。莉緒の相手してたから疲れたでしょ?」
「う、うん!入ってくる!」
本当は一緒に入りたかったし光生からこの前の電話の時みたいに誘ってくれるのかななんて勝手に思っていたから1人で入るのは少し寂しい。
お風呂から上がると食器はきれいに片付けられていて俺も入ってくるから部屋で適当に待っててなんて言われる。
「いつもならすぐに触ってくるくせに!」
せっかくのお泊まりなんだから少しくらいイチャイチャしてくれてもいいのに俺ばっかりそんなことを考えていてバカみたいだ。部屋にある大きなテレビを見ながら文句を言ったところでなにも起きるわけがなくため息をつく。
「ねぇ、俺の髪乾かして。」
すると突然部屋のドアが開き光生はドライヤーを見せてきた。いつもセットしている髪に見慣れているせいか髪が濡れている光生にドキッとする。
「ってその前に涼から乾かさないとね。」
光生は俺の後ろに座り丁寧に髪を乾かしてくれていてこうやって俺のことをいつも優先してくれる。
「涼の髪さらさらで大好き。」
ドライヤーを止めてそんなことを言う光生はずるい。こんなのどんどん好きになるに決まっている。
「俺も光生の髪乾かす!」
「ん、ありがと。」
俺が光生の髪を乾かしているのが嬉しいのかめずらしく鼻歌を歌っている。乾かし終わり洗面所にドライヤーを一緒に戻しにいけば光生はもう歯磨きをしていて寝る準備は万端らしい。光生と一緒にお風呂に入れなかったし今日はキスもしてくれないしあきらめて俺も歯磨きをして部屋に戻りテレビを見る。
「涼こっち来て。」
ベットに寝ていた光生は突然俺のことを呼ぶとポンポンと布団を叩く。
「涼に触りたすぎて俺もう限界来そう。」
そう言っていつものように優しく笑う光生にたまらなくなりベットに入り隣に寝ればぎゅっと抱きしめられる。
「ふふっ、やっと涼のことひとりじめできる。」
なんでそんなに嬉しそうな顔をするんだ。そしてゆっくりと近づいてきた光生は俺が今日ずっと待っていた優しくて甘いキスをしてくれた。
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