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第150話 光生side

涼にキラキラした顔でバスケをしている俺が絶対かっこいいなんて言われるとしないわけにはいかない。ちょっとでもかっこいいと思ってくれるのなら星くんの誘いでも我慢できる俺は単純だ。 「あっ!椎名くんこっちこっち!」 体育館に着けば遠くにいる星くんはすぐに俺を見つけ手を振ってくる。いや俺ではなくてきっと涼を見つけている気がする。そんなことに全く気づいていない涼はご機嫌らしく隣で鼻歌を歌っている。それがかわいくて思わず笑えばパッと顔を上げ見つめてくる。 「光生、なんで笑ってるの?」 「ん〜?音痴でかわいいなって思って。」 「なにそれ、ひどい!!音痴じゃないもん!」 わざといじわるなことを言うとすぐに怒る涼を見て、この状況で2人きりだったらすぐに押し倒してキスしてるのになんて思う。絶対にその後トロンとした顔で俺のことを見つめ無意識に煽ってくるところまで簡単に想像できる。 「なにさっきからニヤニヤしてんの!朝もそんな顔してたし絶対変なこと考えてるでしょ!」 また大きな声で文句を言ってくる夢を睨めば涼の手を引っ張り早足で歩く。 「さくらちゃん椎名なんてほっといて行こ!」 俺と夢が喧嘩をすると涼はなぜかいつも楽しそうに見ていて今だってニコニコと笑っている。連れて行かれてしまった涼は少し離れた場所でいつのまに仲良くなったのか部員の人達と楽しそうに話している。 「椎名これ履けば?」 俺の所へ来てシューズを渡してくる夢に、ふと懐かしい気持ちになった。態度も気も強いくせにすぐにこうやって気づいたり面倒見がいいところは中学から変わらなくてやっぱりマネージャーなんだなとぼんやり思う。 「ふっ、久しぶりにマネージャーしてるところ見た。」 「椎名に言われるとなんか馬鹿にされてる気分になるんだけど!」 いつも言い合っていたころを思い出し笑えば夢は俺に軽くぶつかってくる。 「星くんより上手なところ見せないとさくらちゃん取られちゃうんじゃない?」 「ふっ、俺が星くんより下手だと思ってんの?」 「その自信しかないところ中学からずっと変わんないね!」 そう言って夢は近くに転がっていたボールを拾って渡してくる。 「夢も俺よりバスケが上手い人まだ見たことないの本当は気づいてるんじゃない?」 ドリブルをつきながら自信満々に笑うと同じように夢もニッと笑った。それを合図にその場からシュートを打つ。 「ぇえー!!!光生すごいっ!!」 すると大好きな声が聞こえてくる。振り返れば涼は俺の所へ走ってきてバシバシと体を叩いてくる。 「こんな遠くからシュート決めるなんてすごすぎるよ!!すっごいきれいだった!」 「ふふっ、大袈裟じゃない?てか見てたの?」 「もちろん!ねぇ、もう1回見たい!」 「じゃあ涼からキスしてくれたらいいよ。」 涼に褒められご機嫌な俺はつい調子に乗ってしまう。冗談で言ったのに顔を赤くして俯くところがかわいくてさらにやる気になってくる。 「2人とも私がいるの忘れてない?目の前でイチャイチャしないでよ!」 夢のうるさい声も気にならないほど俺の気分は最高に良い。 「へぇ〜、椎名くんやっぱり上手だね!」 やばい、浮かれすぎて星くんの存在を忘れかけていた。俺たちの元へ来たかと思えば手に持っていたボールを投げ俺とほとんど変わらない場所からシュートを決めた。

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