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第153話

夢ちゃんと話しているといつのまにか体育館には人が増えていた。きっと光生と星くんを見に来ているのだろう。あんなに上手で目立つ2人が真剣にバスケをしていれば当たり前に人は集まってくる。 「あっ、ボール転がってきた!」 俺たちのところに転がってきたボールを手に取ると光生は駆け寄ってきて頭を撫でてくれる。 「ふふっ、さっきから夢と楽しそうに何話してるの?」 優しい顔でそんなことを聞く光生がかっこよくてしょうがない。それに普段と違い髪が少し崩れて汗をかいているところに思わずときめいてしまう。 「あのね!さくらちゃんがさっき椎名のこと、」 「わぁー!!ストップ!!夢ちゃん!!」 内緒だって言ったそばから光生にバラそうとする夢ちゃんを必死に止めればニヒヒといたずらっぽく笑っている。 「ふっ、俺がなに?」 だからそんな優しい顔で微笑まないでほしい。苦しいくらいにドキドキしていることがバレないように隠すのが大変だ。 「な、なんでもない!!ほら、星くんが待ってるよ!」 ボールを渡せば俺のほっぺたをつまんでニコッと笑う。たくさんの人が見ているのにさっきから光生は全く気にせずに触ってきて俺ばっかりいろいろと意識してしまう。 「もうちょっとだけ待っててね。」 時間なんて気にしなくていいしむしろバスケをしているところをもっと見ていたいのにいつだって気にかけてくれる。頷けば光生は星くんのところへ戻って行った。 「椎名はさくらちゃんにデレッデレだね!今なんてすっごい愛おしそうな顔してたもん!」 「そうかなぁ?光生は夢ちゃんと話してるときもデレデレしてるよ!」 口では文句やいじわるなことを言っているけどいつも嬉しそうに夢ちゃんのことを見ているのを俺は知っている。 「ぇえ!?どこが!?さくらちゃんおかしくなっちゃったの!?」 「んふふっ、なってないって!」 2人とも絶対に認めないけどお互いに大好きで信頼しあっている関係性が俺は大好きだ。そのまましばらく光生たちの事を見ていると夢ちゃんは突然大きな声を出す。 「わぁっ!さくらちゃん今の見た!?星くんがシュート外した!」 「本当だー、めずらしいね!でもさっきからずっとしてるからそりゃ外しちゃうよねー!」 「うふふっ、でも椎名はまだ1回も外してないけど?」 ニヤニヤと俺を見る夢ちゃんはなんだか光生とそっくりだ。ようやく勝負が終わったのか光生と星くんはバスケをやめて何か話している。 「さくらちゃん今日はありがとね!いっぱい話せて楽しかったし久しぶりに椎名がバスケしてるところも見れたしさくらちゃんのおかげ!」 「んーん!お礼を言うのは俺のほう!夢ちゃんといるといっつも元気もらえるから!」 夢ちゃんは俺の手を握るとブンブンと振って満面の笑みで笑う。 「だから夢は涼に触りすぎだって。俺の許可なしに涼の手握らないでくれる?」 いつのまにか近くにきていた光生はまた夢ちゃんにいじわるなことを言っている。 「はぁ!?なにが俺の許可よ!」 「当たり前でしょ、俺の涼なんだから。」 「ふーん、私にそんな態度取ってもいいの?」 やっぱり光生は夢ちゃんに頭が上がらないらしく拗ねた顔で黙っている。それがおもしろくてつい笑えば光生に睨まれてしまった。 「私まだ片付けしないとだからさくらちゃんまたね!今度またいっぱい話そうねー!」 夢ちゃんは星くんのところへ行くと2人とも手を振ってくれる。 「んふふっ、光生帰ろっか!」 いつまでも拗ねている光生の顔を覗きこめば黙ったまま頷く。きっとすぐには機嫌が戻らないだろうなと思いながらもこういう時の光生はやっぱりかわいくていっぱい甘やかしたくなってしまう。

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