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第208話
「涼起きて。学校行かないと。」
体を揺らされ目が覚めると目の前に光生がいて心臓が飛び跳ねる。
「っっ!!光生近いって!!」
「涼が俺にくっついて離れなかったんじゃん。」
全く記憶にない。ていうかいつのまにか寝てしまっていた。
「あれから俺に抱き枕のようにしがみついて離れなかったの覚えてないの?」
「ぇえ!?俺が?でも光生の夢は見た、、」
ゾンビが来て結局光生に助けてもらう夢なら見たけどこれはかっこ悪いから内緒だ。あくびをする光生は寝不足なのかボーっとしている。
「光生また寝てないの?ちゃんと寝ないとだめじゃん!」
「ふっ、誰のせいだと思ってんの。」
心配で怒ってしまう俺のほっぺたを光生はムニッとつまむ。
「……そうだよね、ごめんね、、俺が先に寝ちゃったから怖くて寝られなかったよね、、」
光生が寝るまで起きているつもりだったのに気づけば朝になっていてそれにせっかくの誕生日だったのに結局何もしてあげることができなかった。ただ俺が美味しいご飯を食べてあったかいお風呂に入って一緒に映画を見ておもてなしをされただけな気がする。
「ふふっ、嘘だって。涼が隣にいたから緊張して眠れなかったの。」
「……なにそれ、、光生緊張したこととか今まで1回もないでしょ!」
いつも余裕たっぷりで堂々としてるし。朝から機嫌が良い光生はそんな俺の発言に大笑いしてる。
それから学校に着くと光生は眠いと言ってすぐに保健室に行ってしまった。結局お昼まで帰ってこなくて保健室に迎えに行ってみる。
「あら、佐倉くん!椎名くんならずっと寝てるわよ!1回も起きずに!」
やっぱり。昨日寝られなかったみたいだしそんなに映画が怖かったのかな。気にせず最後まで見ていたことが申し訳ない。
「うふふっ、さっき言ってたわよ!昨日は大好きな人が隣で寝てたからいろいろと我慢するのに必死だったって!」
「………え?」
キャーっと顔を手で覆いはしゃぐ保健室の先生はそれから楽しそうに俺のことを見る。
「佐倉くんは椎名くんにすごく大切にされてるわね!」
ニヤニヤとしている先生はどうやら俺たちの関係を知っているらしい。
「なんか恥ずかしいからやめてよ、、」
「あらあら、照れちゃってかわいい!椎名くんがいつもここに来るたびに言ってるわ!佐倉くんのことがかわいすぎて誰かに取られないかすごく心配だって!」
そんなことを言っていたなんて知らなかった。ていうか聞いているこっちが恥ずかしい。
「……お、俺やっぱりもう戻るっ!」
慌てて逃げるように保健室を出れば夢ちゃんとばったり会う。
「さくらちゃんだ!なにしてるの?」
「あっ、、えっと、、光生のこと迎えに来たらまだ寝てたから教室に戻ろうと思って!」
「そうなの?じゃあ外で私と一緒にお昼ご飯食べない?ひなたぼっこしようよ!」
「したい!絶対楽しいじゃん!」
外に出ると太陽の光が当たりポカポカしていて気持ちがいい。夢ちゃんはコンビニの袋からチキンを3つ取りだすと俺に1つくれる。
「ありがとう!でもいいの?これ夢ちゃんの大好きなチキンでしょ?」
「いいのいいの!ほらまだあるから!」
そう言って袋の中を見せてくれる夢ちゃんは大量に買ってきたらしい。
「そういえば椎名の誕生日どうだったの?」
「え?あぁ、昨日家に泊まったよ!って夢ちゃんに相談したいことがあるんだった、、」
「え!なになに!?なんでも言って!」
夢ちゃんは嬉しそうに顔を覗き込んでくるから恥ずかしくて言い出しにくい。
「あ、いや、、その、、光生の誕生日になにも喜ぶことしてあげられなかったから、、なにかないかなってずっと思ってて、、」
「きゃーっ!なにそのかわいすぎる悩み!!椎名が羨ましい!」
俺の真剣な悩みをかわいいと言う夢ちゃんはどこか光生と似ている。
「それにプレゼントもあげてないし、、」
「じゃあ今日の放課後一緒に買いに行かない?丁度、部活休みだし私も買いたいものあったの!」
「え!?せっかくの休みなのにいいの?」
夢ちゃんが一緒に買いに行ってくれるなら心強い。それに放課後にこうやって遊んでくれることが何より嬉しい。
「当たり前じゃん!椎名には内緒で行こうよ!」
「うん!夢ちゃんありがとう!!」
どこまでも優しい夢ちゃんはそれから一気にチキンを食べだす。それがおもしろくて笑えばかわいい顔で睨まれてしまった。
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