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第209話

「涼早く帰ろ。」 それから放課後になり光生はまだ眠たそうにしている。 「ごめんね、今日は一緒に帰れない、、」 そういえば断る理由を考えていなかった。 「なんで?今日はバスケ部休みでしょ?星くんのこと見なくていい日じゃん。」 「見なくていい日って、、」 一瞬で不機嫌になった光生はトゲのある言い方をしてさっきよりも近づいてくる。 「その、、今日はちょっと用事があって、、明日からはまた一緒に帰れるから、、」 「なんか隠してない?星くんと遊ぶの?」 「んーん、遊ばないよ、、」 「じゃあなに?恋人の俺に言えないようなことでもするの?」 どんどん近づいてくる光生はここが教室だろうと関係ないらしい。 「さくらちゃんは今から私と遊ぶの!」 光生のことをカバンで殴る夢ちゃんは俺と目が合うとニコッと笑う。 「ね!さくらちゃん早く行こ!」 俺の手を握る夢ちゃんはすぐに光生に引き離される。 「は?夢と遊ぶの?じゃあ俺も行く。」 夢ちゃんに握られていた俺の手はいつのまにか光生にギュッと強く握られていた。 「椎名はだめに決まってるでしょ!今日は2人で遊ぶ約束してるんだから!」 「夢に聞いてないし。俺は今、涼と話してんの。」 相変わらず2人は喧嘩しかしていない。 「光生ごめんね、、今日は夢ちゃんと遊ぶから今度また3人で遊ぼう?」 俺だってできることなら3人で遊びたい。でも今日だけは絶対にだめだ。 「なんで2人で遊ぶの?夢と遊んだら食べてばっかりだし彼氏の話しかしないし声大きくてうるさいし絶対につまんないよ。」 光生はさっきから夢ちゃんに対してひどいことばかり言っている。寂しい思いをさせていることはわかっているけどでも夢ちゃんのことも同じくらい大事だ。 「光生!そんな言い方するのだめだよ!夢ちゃんに謝って!!」 「絶対嫌だ。」 不満たっぷりのその返事にもうどうすることもできない。恐ろしいほど不機嫌な光生は夢ちゃんの方を向く。 「なに?これがあの時言ってた仕返し?」 なんの話をしているのか仕返しがどうとか言っている。冷たく話している光生は夢ちゃんのことを怖いくらいに睨む。 「は?こんなのが仕返しなわけないでしょ?ていうかわがままばかり言ってさくらちゃん困らせないでくれる?」 そんな光生に全く恐れることなく言い返せるのなんてきっと夢ちゃんくらいだろう。 「ほら、さくらちゃん早く行こう!」 夢ちゃんは俺の手を引っ張り早歩きで下駄箱へ向かう。振り返れば光生は怒った顔をしていたけど今日だけは許してほしい。誕生日になにもしてあげられなかったからどうしても光生が喜ぶことをしたいんだ。

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