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第210話
「椎名すっごい怒ってておもしろかったね!」
ルンルンで歩く夢ちゃんは楽しそうだけど俺は光生のことが心配だ。
「光生大丈夫かな、、俺が嘘つくのもっと上手だったら怒らせなかったんだけど、、」
「大丈夫だって!帰って電話してあげたら一瞬で機嫌直るから!」
そんな簡単に許してくれるだろうか。でも光生の扱いに慣れている夢ちゃんがそう言うなら後で電話してみよう。
「ねぇ、夢ちゃんも買いたいものあるって言ってたけど何買うの?」
「うふふっ、秘密!」
人差し指を口に当てて笑う夢ちゃんがかわいすぎてなんだかこんな俺が隣を歩いていいのか不安になる。
「さくらちゃんは?プレゼント何買うか決まってるの?」
「それが全然決まってなくて、、光生欲しいもの無さそうだったし聞いてもいらないって言いそうで、、」
「ん〜、そうだよね、難しいね、、さくらちゃんがあげるものだったらなんでも喜ぶだろうけど、せっかくなら使ってほしいよね!」
こんなに親身になって悩んでくれる夢ちゃんは優しすぎだ。いろんなお店を見て回るけどいまいちピンとこない。
どのお店に入っていいかもわからなくなってきてぼんやりと歩いていると俺でも知っているブランドのおしゃれな下着を着たマネキンと目が合う。ていうかこれ光生が履いていた気がする。
「わぁ!さくらちゃんこれいいじゃん!お店入ろうよ!」
ぼーっと見ていた俺に気づいた夢ちゃんはバシバシと肩を叩く。それからお店に入れば迷うくらいの下着が置いてある。
「これ絶対光生に似合う、、」
黒くてかっこいい下着を手に取れば簡単に想像できるほど光生のイメージにピッタリだ。
「本当だ!椎名こういうの好きそう!さくらちゃんセンス良いね!超おしゃれ!」
夢ちゃんは俺が選んだものをすごく褒めてくれるから喜んでくれるかなと不安になっていた気持ちが無くなっていく。
「じゃあこれにする!夢ちゃんありがとう!」
なんだか渡すのが楽しみになってきた。喜ぶ姿を想像していると、ふと思いつく。
「これ俺も買ってお揃いにしたら変かな?」
この前、莉緒ちゃんとシールをお揃いで持っていたら怒っていたしまだ光生とはお揃いのものを持っていないからどうかななんて思って夢ちゃんに聞いてみる。ていうかこんなこと夢ちゃんに聞いてもいいのだろうか。
「私も今言おうと思ってたの!椎名絶対さくらちゃんとお揃いのほうが喜ぶし私にすっごい自慢してくると思う!」
やっぱり夢ちゃんはすごい。全てにおいて肯定してくれるから自信がついていく。それから会計を済ませてお店を出る。
「夢ちゃん今日は本当にありがとう!おかげで良いもの買えた!お礼に何か奢るよ!」
「えー!私は何もしてないよ!さくらちゃんの付き添いしただけだし一緒にいて楽しかったの私のほうだもん!」
「でも、、こんなに長い時間付き合ってもらったし、、」
どうしてもお礼がしたい俺に気づいてくれたのか夢ちゃんはコーヒー屋さんを指差す。
「じゃああれ飲みたいから奢ってよ!コーヒー飲めないから甘いココア!」
ニヒヒッと笑う夢ちゃんはココアを注文するところもかわいい。
「うん!じゃあ俺も同じの飲む!」
それから店内で少し話していると夢ちゃんは思い出したかのように立ち上がる。
「さくらちゃん!ここで少しだけ待ってて!」
夢ちゃんはそう言い残し一瞬でどこかに行ってしまった。そういえば買いたいものがあるって言ってたし、もしかしたら俺が一緒だと買いづらかったのだろうか。それとも俺がいろいろと迷っていたから気をつかってくれていたのかもしれない。悪いことをしたなと思っていると夢ちゃんはニヤニヤと笑いながらすぐに戻ってきた。
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