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第211話
「これさくらちゃんにあげる!」
「え?俺に?」
かわいい紙袋を差し出してくる夢ちゃんに首を傾げる。
「この前、椎名の誕生日を先に教えちゃったお詫び!」
「ぇえ!?そんな悪いよ!ていうかその事は全然怒ってないしむしろ教えてくれなかったら知らないままだったから夢ちゃんには感謝してるし!」
「うふふっ、それにお礼もしたかったの!私といつも一緒にいてくれるしいっぱいいろんなこと話してくれて毎日楽しいから!だから受け取ってくれると嬉しい!」
そんなの俺のセリフなのに。俺のことを助けてくれるのはいつだって夢ちゃんだ。
「夢ちゃんありがとう、、そんなこと思ってくれてたのすごい嬉しい、、」
紙袋を受け止りお礼を言えば夢ちゃんはまたニヤニヤしているからなんだか不思議だ。
「椎名絶対そういうの大好きだから!」
光生が?なんの話をしているのかわからず袋の中を見ればびっくりしすぎてむせてしまった。
「っっ!!ちょ、ちょっと!!夢ちゃん!!」
「あははっ、さくらちゃん超かわいい!」
焦りまくるそんな俺に夢ちゃんは楽しそうに笑う。入っていたのは女性用の下着でしかもなんかすごい雑誌で見るような際どいやつだ。
「それ着て椎名にこう言ってほしいの!「写真見せたこと夢ちゃんに謝らないと触らせない」って
!!」
何を言っているのか全く理解できない。まず写真ってなんだ。光生がまた夢ちゃんを怒らせるようなことをしたことはなんとなくわかったけど俺がこれを着るのと何も関係ない気がする。
「それにこれ着たら椎名絶対喜ぶよ!しかも誕生日のお祝いなんて言ったらもうデレデレだね!」
夢ちゃんは男の俺にそんなことを言って恥ずかしくないのだろうか。光生が喜ぶならともう一度、袋の中をチラッと見てみるけどこの下着はいくらなんでもセクシーすぎる。
「……そういえば光生が小さくてスケスケなレースの下着に興奮するって言ってた、、」
ふとこの前のことを思い出す。えっちなお姉さんが着てるような見えそうで見えないのが好きだと言っていた。
「ほらやっぱり!それで色は絶対に黒だよ!」
夢ちゃんはドヤ顔で教えてくれる。そんなところも無邪気でかわいいけど話の内容が過激すぎだ。
「そうかな、、なんか光生は女の子らしいピンク色とか白色とかが好きそうだけど、、」
「いや絶対に黒だよ!しかもさくらちゃんみたいなかわいい子がセクシーな黒色を着るから椎名はそのギャップにやられるの!!」
「………ちょっと恥ずかしいから夢ちゃん1回ストップ、、」
いくら端の席だからってそんなに大きな声で言われると恥ずかしい。それなのに夢ちゃんは気にする様子もない。
「うふふっ、楽しみだね!」
そう言ってココアを飲む夢ちゃんはどっちの意味で言っているのだろう。光生が夢ちゃんに謝ることが楽しみなのか誕生日をお祝いできる俺に言ってくれているのかわからない。
それからまたすぐに違う話をする夢ちゃんはやっぱり話していると楽しくて気づけば日が暮れていた。夢ちゃんを家まで送ると前に言ってた通り光生の家と近かった。
「光生に電話しないとだった、、」
俺も家に着きひと段落したところでスマホを手に取る。
「怒ってないといいけど、、」
電話をかけてすぐに出てくれた光生の声は不機嫌そのもので俺の願いは一瞬で砕け散った。
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