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第240話 光生side
「あっ、光生!雨降ってきちゃった、、」
学校が終わり俺の家まで一緒に帰っている途中ポツポツと雨が降ってくる。
「本当だ。急ごっか。」
あんなに晴れていたのに夢が言った通りになってしまった。家に着き涼を部屋に入れ座らせる。
「ちょっと濡れちゃったね。タオル持ってくるから待ってて。」
窓の外を見る涼は雨が嫌いなのか元気のない顔をしている。
「ん?一緒にタオル取りに行く?」
頭を撫でれば勢いよく頷いていてそんなに雨が嫌なのかとカーテンを閉めれば小さな声でありがとうとお礼を言われる。
「あら、涼くん!寒かったらお風呂入っていってもいいからね!」
洗面所で拭いていれば母さんが覗いてくる。
「あ、いや全然!ありがとうございます!」
普通に話している姿にさっきの元気のない涼は俺の気のせいかと思い部屋に戻ればまた浮かない顔をしている。
「これスウェット。洗っておいた。」
「ありがとう、、」
部屋に呼ぶための口実のスウェットを渡せば涼はソワソワとしだす。
「ん?どうしたの?」
「こ、これ、、嫌じゃなかったら1回光生に着てほしい、、」
俺が?なんて思いながら制服を脱ぎスウェットを着ると涼はお礼を言って脱がせてくる。
「ん?」
なんのことやらわからない俺はまた制服を着れば涼はそのスウェットをギュッと抱きしめ顔に当て深く息をする。
「ん、、これで安心だ、、」
何が安心なのかわからないまま首を傾げればまた見上げくる。
「……光生の手ちょっとだけ握っててもいい?」
「いいよ。当たり前じゃん。」
そんなこと聞かなくてもいいのに遠慮がちにそっと指先に触れてくる手をギュッと握り直せば安心した顔を見せてくれる。
「涼は雨嫌いなの?」
やっぱり様子がおかしい涼に思い当たることを聞いてみればコクッと小さく頷く。
「……雨って言うよりは雷が苦手てで、、だから土砂降りの雨もあんまり好きじゃない、、」
待って。かわいすぎない?だからあんなに浮かない顔をしていたのか。寂しそうに笑う涼は俺にピッタリと近づく。
「今日家帰っても俺1人だから、、光生の匂いしたら大丈夫かなって思って、、」
スウェットをチラッと見る涼に全てを理解した。
「ふっ、そういうことね。ちょっとスウェット貸して。」
いつもつけている香水をスウェットにかければ涼は嬉しそうに笑う。
「わぁー!ありがとう!」
「ていうか今日も泊まっていけばいいのに。」
「ううん、、連続で泊まるのは申し訳ないし大丈夫だよ!ありがとう!」
いつだって遠慮する涼に上手く甘えさせることはできないだろうか。そんなことを思っていたらコンコンと部屋のドアが鳴る。
「光生!明日雨ひどいから休校だって学校からメールきたわよ!」
母さんの声にドアを開ければ今作ったのかミルクティーを渡される。
「涼くん今日泊まっていったら?今から雨もっとひどくなるみたいだし帰るの大変でしょ?」
「あ、でも、、昨日も泊まらせてもらったばかりなので、、」
「あら、そんなこと全く気にしなくていいのよ!こんな雨の中帰せないしそれにもう涼くんの夕ご飯も作ってる途中なの!」
申し訳なそうにしている涼の肩を母さんはポンポンと叩く。
「着替えも光生のがあるし!ね!泊まって行って!」
「……ありがとうございます、、じゃあお言葉に甘えて、、」
いやこんな奇跡が重なることがあるのか。雨で元気のない涼には申し訳ないけど俺はめちゃくちゃにテンションが上がる。
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