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第270話

「涼早く帰ろ。」 午後の授業に出た光生はさっきからあくびを何回もしている。 「んふふっ、光生まだ眠たそう!」 「うん。眠たいから速攻で家に帰って涼と一緒に寝るの。」 光生は相変わらず強引だ。そんなところも大好きだけど今日は予定があることを伝えていなかった。 「今日は遥くんの家行くから今度一緒に寝よ!」 「……え?」 なぜか一瞬で機嫌が悪くなった光生は近づいてくる。 「絶対やだ。俺は今日涼と一緒に寝たいの。」 そんなこと言われたって遥くんと先に約束してしまった。 「でも遥くんに行くって言っちゃったし明日じゃだめ?明後日でもいいし、、」 「昨日は遥くんより俺のこと優先してくれたのに今日は遥くんのこと優先するんだ?」 「そんなんじゃないよ、、ただ先に約束したのが遥くんだったから、、」 光生のことを後回しにしてるわけではない。どうしていいかわからず俯けば頭にフワッと光生の手が触れる。 「ん、ごめん。そうだよね。わがまま言ってごめん。」 いつもの優しい光生の声に顔をあげれば微笑んでくれるけどなんとなく寂しそうに見える。 「あ、、やっぱり遥くんにまた今度にするって連絡するから今日は光生の家に、、 「んーん、遥くんのところ行ってきて。俺はいつでもいいし昨日いっぱい涼のことひとりじめさせてもらったから。困らせちゃってごめんね。」 俺が言い終わる前に話を遮るように光生はまた謝る。 「ほら、一緒に帰ろ?」 ニコッと笑う光生に気を遣わせてしまったかななんて思いなんだか寂しくなる。それなのにいつも通りに話してくれる光生は家まで送ってくれた。 「また明日ね。」 そう言って頭をグシャグシャと強めに撫でてくれる光生の手をギュッと握る。きっと今の俺は浮かない顔をしていると思う。 「ふふっ、今度いっぱい一緒に寝てもらうから気にしないで楽しんできて。」 やっぱり光生に気を遣わせてしまった。家に着き部屋に入れば昨日のことを思い出す。俺のわがままで光生を床で寝させてしまったのに何一つ文句を言ってこないことも朝起きれば俺の体の上に光生の服が毛布がわりにかかっていたことも今になって気づく。

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