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第271話
「やっぱり光生の家に行くってもう1回言うとしつこいかな、、」
さっきもなんとなく話を流された気がするしここで遥くんの誘いを断れば光生は気にしそうだ。こんなとき夢ちゃんがいてくれれば一瞬で解決するのかもしれない。でもきっと部活中だろうし邪魔はできない。
「………遥くんの家行こう。」
考えたってわからなくて遥くんの家に行けば既にご飯が並べられていた。
「涼って小さいくせによく食べるよね。」
くせにってなんだ。遥くんは昔から失礼なことをズバズバ言ってくる。きっと光生なら「全部食べていいよ」とか「お腹壊さないようにね」とか絶対に優しい顔で言ってくれる。ってまた無意識に光生のことを考えてしまっていた。
「椎名くんってかっこいいよね。」
「え!?なに急に!?」
突然の話題に驚く俺を見て遥くんはおもしろそうに笑う。
「ふっ、それ食べ終わったら椎名くんのところ行けば?」
「……え?」
「なにか約束でもしてたんじゃないの?」
なんでバレたのかは謎だけどいつもと変わらない顔で話す遥くんに頷けば笑われてしまう。
「あははっ、なんで俺のこと優先してんの。約束してたなら俺の誘い断ってよ。」
「……だって遥くんと先に約束したし、、」
「それはそれで嬉しいけどそんなこと気にしなくていいから。それにさっきからずっと浮かない顔してるし椎名くんのことばっかり考えてるでしょ?」
「…うん。今ごろ1人で寝てるのかなって、、」
「ふっ、それは大変だ。」
こんなことを言ったって状況を知らない遥くんはきっと何のことかわからない。それなのに深くは聞いてこないところに優しさを感じる。もう何が正解なのかわからないけど今はどうしても光生に会いたい。
「ほら、早く行ってあげなよ。」
「でも俺いっつも光生に気を遣わせてばっかりだし会いに行ってもいいのかな、、」
光生はどんな顔をするのだろう。また寂しそうに微笑まれると嫌だななんて思っていれば遥くんはコツンと頭にゲンコツをしてくる。
「涼が椎名くんに気を遣ってるから椎名くんも気を遣ってくるんでしょ。もっと素直になったほうがいいよ。」
遥くんのアドバイスは心にズッシリとくる。
「……遥くん、、やっぱり今から光生のところ行ってきてもいい?」
「あははっ、当たり前でしょ。もう食べ終わったなら行きな。今度また話聞かせてよ。」
そう言って俺のことを玄関まで引っ張る遥くんは頼りになる大事な友達だ。
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