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7 心地よさ

 一日を終え、俺は何故かロイと一緒に布団の中。  断じて俺が寝床に誘ったわけではなく、布団が一組しかないからしょうがなく一緒に入っているだけのこと。ロイは寒さなど感じないかな、と思っていたのを見透かされ、「俺だって寒いからね!」と怒られてしまった。さっきは風呂まで入っていた。ヒナトみたいに長風呂で、あまりに静かでなかなか出てこないもんだから壊れたんじゃないかと心配したほど。飯食ったり寒がったり、むしろ俺より寒がりで布団が一組しかないことに腹を立てていた。ほんとアンドロイドっていうのは嘘なんじゃないかな? と疑いたくなるほど人間臭い。もとよりアンドロイドって一体なんなのだろう? と疑問に思う。 「ユースケ、今日は疲れた? なんかごめんな」 「ん? なんで謝んの?」 「……何となく」  俺が何で謝るのか聞いたらこの微妙な返事。今更気をつかってるのか何なのか、遠慮気味なのが笑えてくる。大の男二人が一つの布団に横になり、おかし過ぎる距離でこそこそと会話をしている。おまけに今日が初対面だというのに、何やってんだろうな、と俺に背を向け寝ているロイの頸を見ながらぼんやりと思った。 「何だよそれ。別に疲れてねえよ。てか人とこんなに関わるのが久しぶりだったから、なんか気分が昂ってる感じ? 疲れてんのとは違うから気にしないでいいよ」  俺はまた二週間ほど仕事を休んでいた。その間誰とも会っていないし、もちろん誰とも会話だってしていなかった。ただぼんやりと一日一日を味気なく生きていただけ……そんなところにロイが訪ねてきたんだ。まさかそのまま一緒に住むことになるなんて、人生何があるかわからないな、と不思議な気持ち。そして少しワクワクしている自分に気がつく。  ヒナトみたいでヒナトじゃない──    俺のことを知ってくれている第三者が身近にいることが、結局のところ今の俺にはとても心強く感じている。 「ロイが来てくれて、俺は嬉しいよ。ヒナトにも感謝だな」 「………… 」 「あれ? 寝たの? そっか……」  何の反応もしなくなったロイに俺は小さく「おやすみ」と言い、目を瞑った。    翌日、俺はロイと近所にある生活雑貨の店と家具屋に向かった。  まず俺たちに必要なのはもう一組の布団だった。 「クッソ、何で俺だけ……」 「俺はぐっすり眠れたよ。でもちょっと寒かった」 「うるせえよ」  昨晩はロイと布団に入ったものの、誰かと一緒に寝るなん今までしたこともなかったし、とにかく狭苦しく落ち着かなかった。ロイはロイで俺のことなんか気にもせず気持ちよさそうな寝息を立てて熟睡していた。挙げ句の果てには俺を抱き枕か何かと勘違いしたのかしっかりとしがみついてくるもんだから、なおさら眠ることなどできなかった。 「首がな……こう、うっ……回らねえんだよな」 「ははっ、やっばいね。寝違えちゃった?」 「笑い事じゃない。誰のせいだと思ってんだよ」  ロイの寝息が首元を撫でるのを思い出し、少し変な気分になる。変な、と言ってもいやらしい気持ちではなく、誰かに抱きしめられるあたたかな温もりが思いのほか心地よく嬉しいものなのだと気付かされてどきどきしたんだ。でも結局変に緊張してしまったのか、俺はそのまま首が固まってしまったらしい。 「今日は俺、使いもんにならねえから。ロイ、色々よろしくな」  今日は一日、家事諸々を放棄することに決めた俺はロイの肩をポンと叩いた。  

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