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14 吐露
いつの間にかヒナトの年齢を超えていた──
あの時から変わらない喪失感に、なんの希望も見出せない。
そんな風に思いながら、ただただ独りなんとか生きてきてロイに出会った。俺がこうなることを見込んでヒナトが寄こしてくれたであろうロイ。一体ヒナトはどんな気持ちだったのだろう。
ヒナトと共に生活をし、当たり前にそれがずっと続くと思っていた。俺が子どもの頃から憧れにも似た感情を向けていたのはきっとヒナトは気がついていない。俺自身もこの気持ちが特別なものなんだと気がついたのは、ヒナトを失ってからだった。
「ユースケ、先寝るね。おやすみ……」
「ああ、おやすみ、ロイ」
先程俺が感情をあらわにしてしまったせいか、今日のロイは口数が少なく俺の顔色を伺うように遠慮気味に接する。ロイに強く当たってしまったことを素直に詫びればいいのに、きちんと「ごめん」も言えずに俺は目を逸らしてしまった。
(生前のヒナト様に依頼され、本日お伺いしました)
そう言って俺の前に突然現れたロイ。プログラムされたから、と言って俺と共に生活をしているロイ自身は何を思ってここにいるのか……
アンドロイドだと言われそのつもりで接していても、どこからどう見てもロイは人間と変わりはないし違和感だってない。日頃の言動から、間違いなくヒナトの記憶はロイの中に存在しているのはわかる。全くの別人なのに、仕草のひとつひとつや言葉、俺に向ける表情までもヒナトを感じてしまう俺がいる。それが嬉しく思うと同時に、ロイに勝手にヒナトの面影を重ねて見てしまう自分が少し怖かった。そのせいで悪く言えばいつまでもヒナトを引きずり前へ進めないような気がしてしまう。事あるごとに思い出してはこんな風に気持ちが浮き沈みし、見えない荊に囚われたようにまた足が止まってしまう。
横で静かに寝息を立てて眠るロイの顔を見る。ロイが来てくれたことで俺は少なからず生きていく気力は湧いていると思う。間違いなくあの頃の自分ではない。さっきは思わず声を荒らげてしまったけど、冷静になってみれば怒るようなことでもなかったんだ。今まで俺はどれだけロイに救われた? 辛くなる度、ロイは手を差し伸べるように俺を救ってくれているのに。
「なんかごめんな。いつもありがとう……ロイ」
こんなことロイが起きている時に言うべきなのに、やっぱり素直になれずにこうやって意味のないことをしてしまう。寝ているロイに向かって話しかけても聞こえているはずもない。しばらく見つめていても起きる気配はないロイに、気がつけば俺は言葉を続けていた。
「ヒナト。俺な……ヒナトのこと好きだったんだ」
胸の中に留めていた思い。けれどヒナトが生きていたとしても、俺はきっとこの思いを伝えることはない。
「あぁ、もっと一緒にいたかったな……ちゃんとお礼、言えばよかった。ごめんな、弱くって……」
もう決して届くことのない言葉。今更こんな事を呟いたところで何の意味もない。
それでも言葉に出してみれば、少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
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