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第2話
だが女装して、セリアのふりをして会ったレインは何時もと全く違っていた。
誰だお前、と僕は心の中で突っ込みを入れつつ、レインに手を取られる。
女性をエスコートするのは男性の役目であるけれど、その優しげな頬笑みは何だ。
「僕も、セリア嬢を娶る事が出来て幸せです」
「まあ、お上手ですわね」
そう微笑みながら僕は、“僕”って誰だよと思った。
何時も何時も何時も何時も、うち負かされた剣術の授業では、
「この俺に勝とうなんて、スノーには百年早いな」
などと傲慢にもいいはなった俺様が、“僕”などと自分の事を言う。
実はこのレイン自身も入れ替わっているのではと疑問に思うが、見上げて本物かどうかじっと見ると、レインが優しげに微笑む。
不覚にも胸の高鳴りを覚えてしまった僕は、必死で顔をそらした。
これはモテる筈だ。
そういえば女の子達がレインを見てキャーキャー言っていた気がする。
それに悔しさを覚え頑張って僕は牛乳を飲んだりしていたのに、
「小さくな~れ、小さくな~れ」
「呪いの言葉を呟きつつ僕の頭を叩くなぁああああ」
小さくなれといいつつ、僕の頭をレインは軽く叩きやがったのである。
事あるごとにだ。
おかげで僕の身長はこんな感じに……。
そう思いだすと悔しくなってレインを恨めしく思いながら見上げると、レインは苦笑して、
「僕との婚姻はそんなに嫌ですか? セリア嬢」
「……いえ、そんな事はありませんわ。レ、レイン様は見た目は良いですし」
ふふっと笑って誤魔化しながら僕は、上手くレインを乗り気にさせておこうと思う。
そして幸せの絶頂に来た所で、
「残念、僕でした☆」
といって絶望させてやるのだ。
セリアを嫁にというくらいにセリアが好きなのだろうし、ザマ―ミロだ。
そう僕が思いつつレインが妹のセリアを好きなのだろうと思うと、何だか変な感じになる。
やはり可愛い妹のセリアをレインに取られるのが僕には許せないのだろうと僕は結論ずけていると、
「こちらに、今の時期に咲く綺麗な花があるのですよ」
「まあ、楽しみです」
仮面をかぶり、嬉しそうな演技をする僕にレインは優しい。
この優しい様子に僕は罪悪感が膨れ上がってくるけれど、それでもこのレインにはがっかりしてもらおうと思うのだ。
そもそもセリアが乗り気じゃないんだし。
僕はそう思いつつ、レインに連れられて花を見に向かったのだった。
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