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第4話

「さだおみー!あっそぼうぜー!」 鍵を掛けた風紀室のドアを壊す勢いで叩きながら叫ぶ転入生くん。 「だから遊ばねえって言ってんだろうが。あーもー日本語通じねえ。マジで嬲り殺して首に縄つけて都内いっしゅ「あーあーあー。ヤバいです貞臣さん。貞臣さんの犯罪者的思考がだだ漏れです。」 「出してんだよ、バカ犬が。」 それに対して貞臣さんが満面の笑顔で毒を吐く。 貞臣さんは基本笑っている。笑ってエグいことしたり(というか俺にさせたり)する。 まあそんなのが通常運転な貞臣さんが満面の笑みを浮かべてエグいことを言ったら(元不良時代の貞臣さんがでできたら)…つまりは本気で腹が立っているということなのだ。 それを大概の人は知っていて、なので学園内でも貞臣さんを本気で怒らせないことが暗黙の了解となっているのだが、それを守らなかった人物がいる。 それが先日この学園に来た転入生である。 そいつは学校の人気者達、つまりは生徒会だとかを次々に落としていった。 俺の知り合いの変態いわく…王道?とか言うやつらしい。 その他は人間の言葉ではなかったのでよく聞き取れなかった。 その王道転入生とやらが昨日貞臣さんに迫ったらしい。 その現場を目撃していたヤツによれば転入生がお前かっこいいな、友達になってやると貞臣さん顔負けの自分本位な言葉を、自分本位でかつ自分以外の自分本位な発言を許さない、これまた自分本位な貞臣さんに言ってしまい、お怒りをかったらしい。 しかしそれだけでは飽き足らず貞臣さんにベタベタと触れてしまい、他人に触れたくないand触れられたくない潔癖性な貞臣さんの逆鱗に触れてしまったらしい。 その時このままでは貞臣さんが犯罪者になると思ったらしい風紀委員、転入生がヤられると思った取り巻きの生徒会が取り敢えず転入生を急いで引き剥がし、何処かへ連れていき、風紀委員達は俺を呼んだ。(何故だ) そんなこんなで貞臣さんが俺に当たることでその場は一先ず終結したのだが、それでも苛々は収まらないらしく今に至る。 「貞臣さん、委員たち皆怖がってますよ。」 「じゃあ俺が心穏やかに暮らせるように地球外生命体(価値はゴミ以下)を地球から遺伝子一粒たりとも残さないように追い出してこいよ。」 とんでもないことを言い出す貞臣さんに、同族嫌悪ですかといいそうになりなんとか飲み込む。 危うく抹殺されるところだった。 「おい、たかみー俺はいいことを考えた。」 「え、本当ですか?何だか吐気と悪寒がするんで帰っていいですか?」 「たかみー?」 「貞臣様の高尚な御言葉を頂戴したく存じます。」 「よろしい。だけどいわなーい。」 はっ?と漏らした俺の首根っこを掴み、ドアへと引きずっていく。 俺がよくわからずフリーズしていると、ついにはドアを開け始めた。 「あ!やっと聞こえたのか!人を待たせたらダメなんだぞ!とりあえず遊ぼうぜ!」 「なあ、俺のこと好き?」 貞臣さんはずいっ、と転入生に近づき綺麗な微笑みを浮かべる。 「えっ、や…まあ友達って意味では…。でもお前かっこいいし、俺と付き合いたいっていうんだったら別に付き合ってやってもいい、ぞ!」 なんかもじもじ言ってる転入生に貞臣さんはそう。と言って顔を遠ざけると代わりに俺を前に出す。 「誰だこいつ!お前もかっこいいなっ!名前教えろよ!」 「は?俺、は…「山田太郎。」 「え?」 急に人の名前を改ざんして伝えた貞臣さんは、しれーっと笑みを浮かべてる。 「お前、山田太郎っていうのか!じゃあ俺太郎って呼ぶからお前も「すとーっぷ」 「なんだよ、貞臣さっきから!」 「名前で呼ぶの禁止。こいつのこと名前で呼んでいいのは恋人である俺だけだから。」 「は?」 「へ?」 この人はなーにを言ってるんだ。 いつ俺は貞臣さんの恋人になったというんだ。 それに貞臣さんにはれっきとした恋人がいるじゃないか!多分! 「ということで今からこいつといちゃつくので遊べないんだよね。じゃあね。」 フリーズする転入生を余所目に扉を勢い良く閉めた貞臣さん。 そこで漸く貞臣さんの意図してることがわかる。 「俺を売りましたね?」 「あ、わかった?」 「わかりますよ!俺貞臣さんと付き合ってないですもん!もう絶対これから貞臣さんと俺が付き合ってる噂とか触れ回りますよ、あいつ!なんて弁解すればいいんですかっ!」 あーもー、と今後のことを嘆く俺。 「じゃあさ、本当に付き合う?」 「は?」 「嘘じゃなくて本当なら弁解しなくていいだろ?」 一瞬思考が停止した俺。 ふざけた感じなら兎も角、真顔で言うもんだから本気で捉えそうになってしまった。 あぶないあぶない。 だって貞臣さんには副委員長という恋人が多分いるわけで、でもだったらなんで副委員長と付き合ってるって言わないんだ? ああ、そうか。 きっと言えない事情があるのか。 委員長もちゃらんぽらんしてそうに見えて大変なんだろう。 「たかみー?」 「委員長、俺は応援してますからね…」 「はあ?」 怪訝そうな顔をしている委員長の肩に俺は一つ慰めの意味を込めてぽん、と手を置いた。 そして委員長の負担を軽くしたいという気持ちが沸き起こり、今日は担当じゃないが見回りに行くことにした。 「なかなか手強いな。」 「そこがあいつのかわいーとこ。」 そーんな委員長と副委員長の呟きが、委員長を哀れんでる俺には聞こえる筈もなく、今日もストーカーを退治しにいく俺でしたまる

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