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第6話

いつも通り見回りをしていると放課後だというのに食堂が騒がしいことを発見してしまう。なるべくなら何事もなく1日を終えたい平穏希望な俺は大きな溜め息をついて食堂へ向かう。 「はい。関係ない人間は速やかに道を開けてください。」 人だかりに声を掛けると、野次馬達は俺を一瞥しモーゼのように引いていく。なかなかいい奴等じゃないか。と感心し注目を浴びていることに内心舌打ちしながらその道を歩く。 「お前らがいるからあいつらに友達が出来ないんだ!お前らの存在はあいつらに害なんだ!!」 「はあ?僕らは皆様がより良い生活を送れるように尽力してるだけだ!お前の方がいつも皆様を連れ出して仕事の邪魔してるじゃない!」 いや、予感はしていた。していたがやはり転入生絡みで落ちていた気分がさらに底辺にへばりつく。 おそらく生徒会長の親衛隊のやつらと転入生、そして取り巻き。珍しく生徒会のやつらは居らず。まあいたら親衛隊がなにもいえずこのような騒動にはならなかったのだろうが。 取り巻き連中は爽やかなスポーツマンで有名な奴と、一匹狼で有名ないつも帽子を被ってマスクしてる変なやつ。顔がいいという噂もあるが基本がそのスタイルだから顔を見たことがあるやつはほとんどいない。でも美形好きの転入生が連れ回してるということは美形なのかもしれない。 「はい。そこまで。風紀委員会です。」 重い腰を上げ2組の仲裁に入る。なぜか悲鳴をあげる親衛隊と笑顔になる転入生。 「太郎!俺の為に来てくれたのか!こいつら酷いんだぜ!複数で俺をいじめるんだっ!」 太郎?という言葉に皆はてなを浮かべながらもその後に続いた言葉に親衛隊は憤慨したような表情を浮かべる。 「私達はあくまで公正な立場である為、あなたのために来たわけではありません。現在暴力やそれらに付随する行為は行われていないため厳重注意に留めますがこの警告を無視して継続されるようなら風紀違反として皆さん連行します。」 その言葉に親衛隊は顔を曇らせながら離散していった。しかし残った転入生は納得するはずもなく。 「な、太郎なんでそんなこと言うんだよ!俺悪くないのになんでそんなこと言われなきゃ行けないんだ!友達なのに最低だ!」 「いや、友達ではないですし。俺にはあなたにも非があると思っていったまでですよ。」 あまりにも理解できない人種過ぎて俺の顔は温度がないのだろうな。貞臣さんだって横暴だがこいつとは違う。貞臣さんは人の気持ちがわかる。絶対言ってはいけない一言は言わない。だから理不尽でもあの人は信頼できる。 「な!「翼。」 転入生の反抗は、転入生を呼ぶ取り巻きの声により遮られる。その声の主を見ると帽子の奥深くから見えた眼と視線がかち合う。その視線はなぜか俺の奥深く沈めたものを揺らす。 「なんだよ、庄司!俺は今太郎と話してるんだ!」 「生徒会行くんだろ?もう時間だ。お前の好きなお菓子用意してるって言ってたぞ。」 「あ!そうだ!早く行かないとな!」 お菓子で頭がいっぱいになった単細胞の転入生は嬉々として食堂を出て行く。俺は嵐が去った安堵と疲労感で溜め息をつく。 「じゃあね、タカヤ。」 帽子をさらに深く被り庄司は去って行く。その声と暗い瞳だけがただ俺の中で反芻していた。

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