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第8話

俺は今猛烈に緊張している。緊張というのにも色々あって俺のはきっと恐怖が混ざっているのだ。 なんてたってあの天下の風紀委員長、貞臣さんにキスをしなければいけないからだ。 (委員長にちゅーしてよ!) あの無理難題から早3日。あの日散々議論はした。そんなもの遊びでやることではないし、貞臣さんには恋人がいる(かもしれない)し。だが変態は勿論聞く耳を持たず条件は変えられることはなかった。 いつもなら自分で時間がかかってでも調べるが今回は早急に調べて欲しいことだ。情報力であいつの上を行く奴はいない。俺は仕方なく貞臣さんと…キスしなくてはならないと機会を伺うが恋人でもない俺たちにそんな機会ほとんど訪れることもなく。 しかもそんなことしたら貞臣さんがどんな反応をするかわからないから余計怖い。 そんなことを悶々と考えていると3日はあっという間に経過。しかしそんな中、今絶好のチャンスが来ている。風紀室で貞臣さんと二人きりなのだ。 「この前の報告書纏めて俺に提出して。」 「あ、はい。」 「なに?さっきから心ここに在らずだけど?」 貞臣さんはしかめ面をし俺を見ている。びくっとあからさまに動揺する俺に対し不審がっている。 「そんなに動揺してんの珍しくない?」 顔を覗き込む貞臣さん。超絶綺麗な顔が俺の眼前いっぱいに広がる。 もうここしかない、と俺は覚悟を決める。 「貞臣さん、ごめんなさい。」 多分あの変態はどこかで見ている。だからやったという嘘も通用しないだろう。だけどどこにキスしなければならないかは指定されていない。なら口の近く、ほっぺならあいつは満足するはずだ。 俺より数センチ高い貞臣さんの腕を掴み、下から顔を寄せる。きっと今の俺は全身真っ赤なんだろう。なんでこんなことしたかは後で弁明する! 「ちょ、んっ!」 頬にキスをし、俺はすぐ体を離そうとする。しかしそれは叶わない。何故なら貞臣さんの腕が逆に俺を掴み引き寄せたからだ。 「さだ、んっ…は、」 引き寄せられ触れるだけのキス。その後ぬるりと潜入してきた舌が口内を侵していく。甘い快楽に俺の力はするりと抜けていく。いつのまにか貞臣さんの体にしがみついてしまう。 数秒唇を合わせていたのだろうが、俺にはとてつもなく長い時間だった。 力の抜けた体を支えながら貞臣さんを見ると貞臣さんは色気たっぷりに唇を舐めて笑う。 「そんな挑発してると、まじで知らないよ?」 貞臣さんの微笑みを見ながら俺は混乱した頭を抱え叫びながら風紀室を後にした。

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