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第9話

no side ゴリゴリ、ガッシャン、バーン。 おおよそ好ましくない擬音が部屋中になり響く。部屋の主は盗聴用の高音質ヘッドホンを外しドアへ駆けつけた。 「あ、そんなに急がなくてもお茶はゆっくりでいいよ。」 「第一声がそれっ!?」 そこには涼しい笑みを浮かべた風紀のトップと犯罪者兼情報屋が顔を合わせる。もうお分かりのようにこの部屋の主は変態情報屋。そしてドアノブを壊し、蹴破ってきたのは風紀委員長である。 「人のドア壊す人間にお茶を出す思考にならないですって!」 「だって俺がきたのに1秒以内に扉開けないのが悪くない?」 「や、「なーに?」 「その通りです…」 弱味を握られている変態情報屋にそれ以上言える言葉はない。すごすごとIHコンロのスイッチを入れた。 「委員長がここに来るなんて珍しいですよね。なにかご用ですか?」 「わかってるくせに。」 「貴方の飼い犬についてですか。何を依頼されたか、またその内容を聞きにきたと。」 その言葉に委員長は笑みを深めた。変態はメガネフレームに触れ、前髪を掻き上げる。 「それは、出来ません。僕はこんな犯罪紛いな事をしていてもそこだけは譲れない。」 「ふーん、アノコトバラしても?」 「ぐぬぬぬぬぬ。それ、でも…です!」 変態情報屋は後悔が混じった声色でも、目の奥に後悔は燈らなった。それに委員長は愛想笑いを消して本当の笑みを浮かべる。 「だからお前を情報屋にしたんだよね。…まあこっちは別のルート使って調べるよ。あいつが気にすることなんか昔の事でしかないんだし。…それなら久々にあいつら呼ぼ。」 委員長はスラックスのポケットから携帯を取り出し、短い文面を打ってまたしまう。その光景を見て何となくナニを動かしたのか理解した変態は溜息をついた。 「貴方は飼い犬に構い過ぎます。どんだけ好きなんですか。まあ、それも美味しいですけど。」 「そんな事ないよ。俺はあいつが憎くてたまらないもん。偶に殺したくなるよ。」 ふふ、と笑った委員長はオーラが禍々しく変態は後退りする。 「憎い?」 「だって俺以外のこと考えて頭を埋めるんだよ。殺したくなるよ。頭の中のやつも、あいつも。だけどさ俺から離れるなんか許せないから、頭の中のやつだけ殺すことにしたの。」 その言葉に変態は興奮と恐怖で身震いする。 (なんて恐い人だ。そしてなんて強い愛情なんだろう。) 変態は帰ろうとする委員長の背中をみながら思う。 「あ、あとありがとね。プレゼント。今度お礼するね。」 見えなくなる直前に委員長は振り向いて、意味深な言葉を残していく。 その言葉に変態は予期せぬ委員長へのプレゼント、つまりは昼休み撮った写真を見直し不快な笑みを浮かべるのであった。

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