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第11話

自室に帰り、ぼんやりと部屋に揺蕩う。 自分の人生を振り返ると、信じることと裏切られること。それだけを両手に持ち歩いてきた気がする。 俺の家はそれなりに格式の高い家柄だったが、父は母を愛していなかった。母は俺を愛していたけれどそれなりだった。 父が一番。母は父の視界に入る為ならなんだってする女だった。 俺は裏切られて、信じて、でもやっぱり裏切られて。それを繰り返して自分を削り続けた。 家に帰らなくなり夜の街を闊歩していた中学時代にはもう俺は空っぽ。信頼に飢えている動物だった。 そのうち喧嘩が強くなっていき、様々な俺と同じ人種と夜の街を見渡した。向こうは俺の強さを求めて、俺は信頼を求めてただ人を信じた。いや、今考えると信じることに陶酔して、信じた事なんか一度だってなかったのかもしれない。だけれどあの時代は自分が求められていればなんでもよかった。求められている理由だって本当になんでもよかったんだ。 シュン、は両親を除き俺を裏切った最初の人間だった。 あの時代シュンは街の一角を治めていて、俺はシュンの縄張りで売られた喧嘩を買っていた。ある日シュンを含め十数人が俺を探してシメにきた。俺はシュン以外の奴らと喧嘩して、殴られながら、殴りながらを繰り返し遠巻きに眺めるシュンを睨み続ける。 そうして残りシュンと数人になった時、シュンは血だらけの俺に近づく。 「俺を殺すって目、してる。」 「当たり前だろ。お前を殺したいんだから。」 やっとの力で立っている俺の拳は力が入らない。今できる精一杯は目の前にいるシュンを睨み続けるだけだった。 「死にそうなくせにか?もう腕あげる力も残ってねぇだろ。」 「関係ない。別に死んでもいい。でも死ぬ前にお前は殺す。」 そう言い放つと、数秒空けてシュンは笑い出す。 「なんだそれ、めっちゃいいなお前。その目も気に入った。」 シュンは俺の唇から流れる血を乱雑に拭う。そうして舌で舐め取った。 「今日から俺の仲間になれ。いや、俺のものに、だ。」 「は?」 俺の怪訝な顔をよそにシュンは親指を歯で切って血を流す。 そうして俺の口元に持ってきた。 「そのかわり俺はお前のものだ。」 「…それは仲間か?俺はお前を信じて、お前は俺を信じる?」 その言葉にシュンは頷きも首を振ることもなかった。ただ笑っていた。 俺はそれでも、それだけでよかった。 シュンの親指から滴る血を舐めとる。 「俺はお前を信じるよ。だから信じさせてよ。」

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