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第12話
俺はシュンとともに夜の街に身を置き続けた。俺は満たされて、ずっとこのままでいいと思った。だけれどその生活も1年と続かなかった。
シュンはいとも簡単に俺を売った。敵チームに生贄として俺を差し出した。空っぽだった俺に注がれた信頼という甘い水はその瞬間一気に流れ落ちて俺は干からびたのを感じた。
信じたら裏切られる。
だけど信じていないと俺は満たされない。
それに気付いた俺は、その後ただひたすら俺を求めている人間に縋り付いた。それだけが俺は全てだった。
シュンが最後に言った「またね」を俺は思い出すことなく目先のものに飛び付いていた。
貞臣さんと出会ったのは中3の梅雨だった。また裏切られて、信頼できる人を探して貞臣さんが治めている場所にたどり着いた。
そこはなんだか活気があって、夜なのに光で溢れていた。俺は醜い蝶のように貞臣さんの族に迷い込む。
そんな薄汚い俺をみて貞臣さんは笑う。
「随分汚れた猫が迷い込んできたね。」
俺の顔に付いている泥をシャツで拭う。
「お前知ってる。確かシュンのところにいた綺麗なネコだ。」
貞臣さんの言葉に仲間が反応する。
「確かタカですよ。シュンに裏切られて族追い出されたって噂でしたけど。こんなナリしておっそろしく喧嘩強いらしいです」
「まじかよ。貞臣さん敵が送り込んできたやつじゃねーですか?」
その言葉に貞臣さんの綺麗な目が俺に向く。
「そうなの?」
その言葉に俺は捕えられたように声が発せない。ただ首を振るだけしかできなかった。
「そう。じゃあ俺のところおいで。」
「は?マジですか?」
「危ないっすよ!」
仲間が口々に声を荒げる。俺は目を伏せて笑った。
「嘘でも言ってくれますか?信じるって。」
吐き捨てたような俺の言葉。
貞臣さんは俺の顔を無理やり上げる。
「俺嘘はつかない主義なんだ。嘘でも信じるなんて言わないよ。」
貞臣さんの瞳は動かない。光が差し込む。
「お前は俺を信じてればいい。そうすれば俺はお前の全てを信じてあげる。」
そう言って貞臣さんは嘘じゃないよと言って笑った。
その時に感じた感情はどの人間からも得られない、特別な感情だった。
その感情の名前に気付いたのは、ずっと先のことだ。
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