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第13話
貞臣side
「やっぱりね。」
俺の冷たい声色に、 現総長であるマサキは全身を震わせる。別にお前に腹立ってるわけじゃないという意味を込めて笑えばさらにマサキは泣きそうに顔を歪めた。心外。
「マサキー。俺が嫌いなもの言ってみて。」
「は、はい!えび、ピーマン、パクチー、辛いカレーというか辛いもの全て嫌いです!」
「それと?」
「総長の好きなものを横取りしようとするやつ。総長の好きなものにちょっかいをかけるやつ。しつこいやつ。うるさいやつ。眠りを妨げるやつ。」
「つまりー?」
「シュン、ですか?」
「正解。よくできたね、マサキ。」
微笑めば、今度は犬のようにしっぽを振ってマサキは頬を上気させる。可愛いやつだよ、ほんと。
まあ、それはいいとして。シュンねえ。
俺は昔からあいつが嫌いだった。事あるごとに突っかかってきてはちっちゃい嫌がらせをしていく。殺そうとしたが周りに、特にたかみーに止められていた。そんなにシュンが大事なのかと最初は腹が立ったが、俺を犯罪者にしたくないためだとわかって仕方なくあいつを半殺しで留めたのに。
あいつ蛆虫のように湧いてきやがった。
しかも貴弥を狙っている。一度は裏切ったくせに。
何を考えているかわからないシュンが気持ち悪く憎悪しか湧かない。ゴキブリだってもうちょい愛嬌がある。
「やっぱりあの時殺しとけばよかったな。」
そう呟いたけど、やっぱり殺せはしないのだろう。
そんな事すれば貴弥はきっと泣きそうな顔をして笑うだろうから。
「惚れた弱みってのは辛いねえ。マサキ?」
「総長にとって初恋ですもんね。」
俺の思考をまるで読んでたかのような回答。マサキは変に勘がいいから面白い。
初恋だなんて、そんな甘酸っぱくて可愛いものではもうないけれど。
たしかに最初は笑ってくれればよかった気がする。
今となっては全てを手に入れたくて仕方ない。それこそ裏切った時どんな顔すんのかな、とか汚い感情だって浮かぶ。
だけどそれはやらない。そんな事をすれば貴弥は簡単に俺から離れてしまう。
あいつはすぐに信じるけれど、一度裏切られたものに期待をしたりはしない。縋り付きも、泣きもしない。
そんな貴弥を俺は見たくない。
だから俺は何があっても貴弥を裏切らない。
「だけどいつか全て手に入れたら。」
そしたらちょっとくらい俺に縋り付いてくれる貴弥もみたいなって、俺は思うよ。
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