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第15話
シュンと別れ風紀室に立ち寄ると、委員達は帰宅して誰もいなかった。
今人と話す気力もない俺は安堵のため息を漏らし、委員長室に入る。
そこにはソファに横になる貞臣さんがいた。
「珍しいな。」
貞臣さんは人前で滅多に寝ない。俺も寝顔を見たのは数回しかない。恐らく風紀室に誰もいなくなってから横になったのだろう。
貞臣さんの綺麗な顔が夕日に照らされている。この人は本当に綺麗だ。出会った時からずっと、今も。
それは顔だけじゃない。
確かに傍若無人だし、強引だし、笑顔には裏しかない。だけど自分に正直で真っ直ぐだ。自分の懐に入れたものをただ信じる強さがある。
信じることは強い者にしか出来ない。きっと弱い俺は本当に信じたことなんかないんだろう。
だけれど唯一、俺は貞臣さんを信じている。なにが、と問われればうまくは言えない。ただこの人が、この人であり続けることを信じてる。
「貞臣さん、起きてる?」
そっと頬に触れても、貞臣さんは起きない。相当疲れてるんだ。いつだってこの学校の為に尽力しているから。
「今だけは起きないでください。」
貞臣さん。
俺は、貴方の事をどう思っているか今でも言葉にできない。
この感情はどこから来てるのか、どこにカテゴライズされるのかもわからない。
親しい人として、尊敬する人として、先輩として、人として、恋焦がれる人として。
どれに当てはまるのか、まして貴方に恋をしているのかなんて今の俺にはわからない。多分あえて考えないようにしていた。だって恋心なんて持ち合わせて、それに気づいてしまった日には貴方との関係が終わってしまうのが怖い。
だけれど。
「貴方が愛しい。」
貞臣さん。
どうか貴方はそのままでいて。
俺の世界から離れても、俺の世界の中心はきっと、ずっと、貴方だ。
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