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梅本先輩。1

※梅本先輩が浮気をするお話です。そういう内容が苦手な方は、ここで閉じてください。また、今までのお話とは調子が違っています。少々暗めのお話です。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※  何だか先輩が浮気してる気がするんだ。ここニ月くらいの事なんだけど、実家に帰るって言って、結構な頻度でうちに帰ってこない。前は月一回帰るかどうかだったのに、このところ毎週、しかも二三日連続、週の半分近く帰って来ない日もざらにある。  理由を問いただそうと思うけど、いざ話そうとすると、どう切り出せば良いかわからなくて、結局何も聞き出せていない。  今日は、夕方になって二日ぶりに先輩が帰ってきた。両手にスーパーの袋を提げて、晩飯作るから一緒に食べようって上機嫌だったんだ。さっき作り始めたから、今は一緒にキッチンにいるんどけど、何を話したらいいかわからなくて無駄に玉ねぎを細かく刻んでいる。そろそろ限界。涙が止まらない。 そんな俺を見て、先輩が 「どうした、和輝?玉ねぎ、そんなに弱かったっけ?」 と聞く。 「そうでもないよ。今日のは特別。この包丁の切れ味が悪いからじゃない?最近先輩、包丁研ぎサボってたでしょ。」 「あぁ…まぁ……そうだっけ…」 納得してないみたいだったけど、先輩は玉ねぎを受け取ってフライパンで炒め始めた。今日はお前が好きなハンバーグだよって。 うちの親、料理が苦手だったから、ハンバーグもあまり作って貰ったことが無い。こんな気持じゃなかったら、最高の晩御飯なんだけどな。 でも……まぁ、浮気も仕方ないのかな。ゲイの俺と違って、バイの先輩は世の中全部恋愛対象だ。誘惑が多いわけだから、浮気の一つや二つ…不思議じゃないのかも。俺には、バイの感覚は分からないけどね!なんて強がってみるけど、やっぱりスッキリしない。 そんな事を考えてたら、炒め上がった玉ねぎの粗熱を取るために皿に広げ終った先輩がこちらに近づいてきた。俺を抱き寄せてキスしようとするけれど、そんな気になれなくて、俺はふいっと顔を背けてしまったんだ。 「どうした?元気無いみたい。」 そうだね、あんたの浮気の事が気になって元気ないんだよって心の中では言えるのに、実際には言葉が口から出て来なくて、ただ先輩を見つめ返す事しか出来なかった。でも抱き寄せられた体温が懐かしくて、そのまま肩に顎を預けて首筋の匂いを嗅いでみる。けど、なんか違う。うーん、何だろうな。 「……あぁ、ニオイか。」 そうだ、ニオイが違うんだ。何となく、ほのかに感じる違和感。 「えっなに?」 「ニオイが違う。」 「んん?なんのニオイ?」 「うちのニオイじゃない。」 「えーっとなに?」 全く、鈍感だな… 「だからさ、先輩、他所んちのニオイがするよ。」 しばし沈黙。そりゃそうだよ。何も言えるわけない。でも考えたんだな、色々言い訳を。 「えっ俺?ニオイかぁ、うーん、実家のニオイじゃね?今朝実家から大学行って、こっちに帰ってきたんだから、当然でしょ。」 「実家のニオイじゃない。どっか別の家のニオイだね。」 「なんで区別つくんだよ。」 「鼻だけは自信あるんだよ。俺の嗅覚ナメるな。犬並みだぞ!」 ちょっとキレたフリをしてみせると、えっマジって顔して焦るところがカワイイな。カマかけただけだ。そんなに鼻がいい訳ないじゃない。 「今焦ったね?」 「そんなことないって。で、例えば違う家だとして、どこだと思ってんの?」 「そんなの俺が知るわけない。先輩がよく分かってるでしょ。」 「……………」 ホント、隠し事できないタイプ。嘘吐くつもりならちゃんと用意しておけば良いものを… 「何か知ってるの?」 「何も知らないよ。」 「誰かから何か聞いた?」 「何も聞いてないよ。」 「へぇ…。」 「でも…何か隠してるよね?」 「何かって、何?」 「それは先輩がよく分かってるでしょ?」  2回目だけどね。それしか言いようがない。だって、俺は何も知らないんだから。

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