9 / 46
梅本先輩。2
もう、とっとと吐けば良いのにね。これじゃぁ、浮気してますって言ってるようなもじゃないか。先輩の目が泳いでる。笑っちゃうくらい情けない顔。でもカワイイくて意地悪したくなる。しょうがないな、とどめを刺すか…。
「イイ人でも見つかった?先輩。」
「……………」
こりゃ図星だな。
「どんな人?男?女?」
「……………」
言い訳を考えている顔。必死に誤魔化そうとしてるんだ。そんな顔、見せないで欲しいんだけどな。
「もうしたの?」
「……………」
したのかよ…。まぁそうだろうな。駆け引きとか苦手だから、会ったその日にしちゃってそうだ。
「どうするの?これから。その人に乗り替える?」
「あ、いや、遊びだから…」
「遊びの割には入り浸ってんじゃん?」
「っ……それは…、かわいかったんだよ。」
女子かな…?
「ふぅん、かわいかったんだ。で、どこで知り合ったの?」
「……えーっと、先月のサークルの飲み会。」
「また知らないサークルに潜り込んだんだ?」
「そうじゃない。写真部の!ちゃんと所属してます!」
威張るところじゃないけどね。
「で、新入部員が酔っ払ってて放っておけなかったとか?」
「……いや、まぁそんなとこ…かな?」
…かな?じゃねえよ。前科あるし。って俺は酔っ払ってなかったし、酔ってたのは先輩だったけど。
「それで送ってってそういう事になった訳ね…
で相手は知ってんの、俺と付き合ってるって事。」
「和輝だとは言ってないけど、付き合ってる人がいるとは言った」
へぇ、意外。正直に話すんだね。
「じゃ何でこう言う流れになるかね?」
ホントに不思議。恋人いるって言いながら浮気する人とそれ知りなら関係持つ人。俺には理解できないよ。
「あ、えーっと、まぁそれは……ほら、辛いもの食べると甘いもの食べたくなるじゃん?そんな感じかな。」
何だよその例え!俺はおやつなの?
「へぇ、俺は辛いものなんだ。で、そいつは甘いの?ふーん。興味深い話だね。どの辺がそんなに甘いのかな?」
再び長い沈黙。すっかり黙ってしまって、目線も下がりっぱなしになってしまったから、もう何も言わないのかなって思って、次の言葉を探し始めたところで先輩が遠慮がちに口を開いた。
「愛してるって言ってくれるんだよ。」
んん?なんだっけそれ。どこかで聞いた事があるフレーズ。
あっ、それ!こないだ脳内で力説してたヤツだ!そんなのいらないって、それが俺の主張だったのにな。それ、間違ってたって事?先輩には必要だったわけ?
意外だな。俺には言ってくれたことなかったから、そう言うのいらないタイプだと思い込んでたんだ。先輩も甘いこと囁きながらしたかっただなんて…。いや、違うか。それって俺が言うべきだったって事かな。俺が言うのを先輩は待ってたの?
「何?エッチの時に愛してるって言ってくれんの?」
「うん、そうなんだよ。なんか新鮮で…」
おいおいそこで、頬を赤らめるなよ!こっちが恥ずかしくなる…。
「へぇ。先輩、そういうのが好きなんだね…」
…って言うか、何でもかんでも正直に全部喋り過ぎなんだよ、先輩。大好きな人だけど、たまに馬鹿なんじゃないかなって思う。それか、俺のこと、オカンと勘違いしてんじゃないのって。まぁ、親にこんな話し、しないだろうけど。こんなにぶっちゃけてくれなくていいのにさ。本当は、全く聞きたくないんだから。
はぁ、今日の玉ねぎ、強烈だな。まだ目が痛くて涙が出てきた。
ともだちにシェアしよう!