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梅本先輩。3

 付き合い始めてかれこれ一年になる。喧嘩もそれほどないし、仲が良い方だと思う。一緒にいても、ぶつかることもあまりない。そりゃ、色々気になるところはあるけれど、いちいち直せって言ってたらきりがないし、一つ言い出すと全部思い通りにならないと気に入らなくなりそうで、何も言わなかったんだ。それに、そういう所が先輩らしさなんだと思えば、大した問題でもなかった。先輩だって俺に注文つけることはなかったし、それで何か問題があるかと言えば、全く無かった。お互いそうやって分かり合えていると思ってたのに。 結局、俺だけが満足してたのかな。独りよがりってヤツか…。 「先輩、今晩どうすんの?うちに泊まるの?それとも向こう?」 「泊まるって?ここ俺んちのつもりだったんだけど?」 何故か先輩がキレている。もちろん、俺の言い方が気に入らないからだってことは分かってる。でもそれだけの事を先輩はしたんだろうに…。反省の色が見えないよ…。 だからあえて、口調は平坦に、先輩の気持ちを逆撫でしたとしても、荒らげない。 「ああ~まあね…でも別宅もできた事だしさ。どうするのかなって思って。」 「お前ねぇ!そういう事言う?ちゃんとここに帰ってきたんだからさ…。」 俺の口調に先輩の怒りが募っていくのがわかる。こういう時って、逆に落ち着いて来ちゃうんだな…。さっきまで波立っていたのに、今は心の中が物凄く凪いでいて、先輩の表情の変化や言葉の調子で、気持ちまで手に取る様に分かってしまう。同じ温度で話したがる先輩にとっては、今はもう怒りの限界の筈だ。 「だから何?ここ二月、ずっと行ったり来たりだったでしょ。それとも、この2ヶ月なかったことにする気?」 でも、もっと怒らせたくて言った言葉に対して帰ってきたのは、全く予想していないものだった。 「……実はさ…別れてきたんだ、昨日。ちゃんと話したよ、やっぱり今付き合ってる人の方が大事だって。だから、もう行かないし会わない。向こうにもそう言ってきたし、そのつもりだ。相手も…納得してくれた……と思う。」 「へぇ……………。」 あれ…どういう事?先輩、さっきまでかわいいとか新鮮とか惚気てたじゃないか。どうしてそういう話になるんだ?…それに俺、どうしたんだろう、言い返したいのに言葉が全然出て来ない。  勝手な事言ってるって腹立たしい気持ちなのに、めちゃくちゃホッとしてる自分がいる。先輩はやっぱり俺のものなんだって心の隅っこで喜んでいるんだ。 もし今日、この話をしなければ、何事もなったように、先輩は戻ってきていたのかな。何も知らないでいられたのだろうか。なんの蟠りもなく笑っていられたのかな……? やっぱり今日の玉ねぎ、強烈だな。また涙が出てきたよ。ああ~、先輩と初めて出会った頃が懐かしいな。

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